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社説

残り1年の平成時代 元号の持つ意味を考える

 きょうをもって平成は残り1年となった。来年5月1日に新天皇が即位し、新元号に切り替わる。

     私たちにとって元号とは何か。それを考える時、まず歴史を振り返る必要がある。

     敗戦後、元号の根拠法令だった旧皇室典範などが廃止されたため、政府は皇位の継承時に新元号を定めるとする元号法案を閣議決定した。しかし連合国軍総司令部(GHQ)は「天皇の権威を認めることになる」として撤回させた。

     元号の「昭和」は法的根拠のないまま引き続き使われたが、神社本庁などの宗教団体が元号の法制化を求める運動を展開した。

     これに後押しされ、自民党もタカ派を中心に法制化へ動き出し、1979(昭和54)年に国会で激しい議論が行われた末、この年の6月に元号法が成立した。

    激しい法制化論議の末

     それに先立つ79年3月の毎日新聞の世論調査によると「昭和」は国民生活に定着し、9割近くが元号の存続を望んでいた。元号と西暦の使用状況については「主に元号」が78%に達し、「主に西暦」の4%を圧倒した。「元号と西暦と半々」は16%だった。

     一方、「法制化して存続させる」は21%にとどまり、「現在のように慣習として使っていく」が44%と大きく上回った。

     当時の社会党、共産党は、法制化が憲法の主権在民の精神に反するとしたうえで、国際化時代に元号は不便なため西暦に一本化すべきだと主張していた。

     そのころ、作家の佐野洋氏が発表した「元号裁判」という小説が話題になった。大正から昭和へ変わる時に生まれた主人公が、運転免許証に記載された元号の部分を黒く塗りつぶして西暦に書き換えた。それは罪に当たるのかどうか。小説からは戦前の国家主義、天皇制への問題意識が読み取れる。

     そもそも古代中国で始まった元号は、皇帝による「時間の支配」が根源にある。法制化によって元号が天皇の権威と結びつけられ、戦前回帰の機運が高まるのではと懸念されたのは当然である。

     しかし現実には、その懸念は当たらなかった。政治的にも元号を戦前の天皇制と絡めて論じたり、元号廃止を求めたりするような声は高まらなかった。

     その状況をもたらしたのは、天皇と国民との関係が、戦前の暗い記憶の影響を受けることがほとんどなくなったからだろう。現憲法下で初めて即位した今の天皇陛下は国民主権の憲法を重んじ、象徴としての天皇像を作り上げてきた。この姿勢を国民の側も積極的に支持している。

     時代の変化もある。日本の国際化と共に、西暦と元号の併用は一層進んだ。年の途中で元号が変わったことによる年数計算の不便さも影響し、西暦を使う人は増えた。

     それでも長年続いてきた文化として元号が社会に根付いているのは事実だ。「昭和」や「平成」の区分によって、国民は時代へのイメージを共有することができる。

    公文書は西暦と併記を

     一般社会では西暦を使うことがむしろ多くなったが、官庁の公文書は元号の使用が原則になっている。政策目標を示す場合も元号を使うことが多く、「平成40年」「平成50年」などと記載されている。法的根拠はなく、実際の表記は各行政機関の判断に任されているが、戦前からの慣習が続いているのが実態だ。

     日本は今後、人口減少や超高齢化など長期的な重要課題と向き合い続けなければならない。その議論をするには、天皇の在位期間で区分される元号よりも、時間の連続性がある西暦の方がふさわしい。政府は公文書に元号と西暦を併記する慣習を広げるべきである。

     新たな元号への国民の関心も高まりつつある。政府は当初、切り替えの準備のために夏ごろに公表する方向だったが、来年2月以降にすることを検討している。早い時期に公表すれば、陛下の在位中に関心が新天皇へ移るのではないかと懸念する自民党保守派に配慮したためだ。

     しかし、そこまで時期をずらす強い理由と言えるだろうか。国民生活への影響を考えれば、できるだけ早い公表が望ましい。

     過去の経緯を踏まえつつ、元号、西暦とどう向き合っていくか。それは新しい時代のありようとも深くかかわる。

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