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月刊サッカー

西野監督、電撃誕生 数字に強い知略家

2008年の天皇杯決勝で柏を降して優勝し、決勝ゴールを決めたガ大阪・播戸(左)と笑顔で肩を組む西野氏=小出洋平撮影
サッカー日本代表の新監督に就任し、記者会見で心境や抱負を語る西野氏=長谷川直亮撮影

 電撃的な人事は何をもたらすのか。4月7日付でサッカー日本代表のバヒド・ハリルホジッチ前監督(65)が解任され、後任に就いたのは西野朗監督(63)だ。6月14日開幕のワールドカップ(W杯)ロシア大会まで残り1カ月半。最近の試合で思うような結果を残せていない日本代表で、どのようなかじ取りを見せるのか。西野監督の知人、選手の証言から展望した。【大谷津統一、丹下友紀子】

分析がずばり的中 「マイアミの奇跡」城氏/勝負の感性すごい ガ大阪・遠藤

 4月14日。西野監督は大阪・ヤンマースタジアム長居で行われたセ大阪-FC東京戦を代表監督として初めて視察した。182センチの長身を白いシャツに包み、さっそうと現れる姿は年齢を感じさせない。学生時代は埼玉・浦和西高、早大で活躍し、端正な顔立ちも相まって人気を呼んだ。本人も「俺が交代して外れると、スタンドの女の子がいなくなっちゃった」と豪語していたほどだ。

 時の人となったのは1996年アトランタ五輪だ。日本を率いて1次リーグでブラジルを破った「マイアミの奇跡」はデータを重んじる姿勢が生きた。後半27分、MF路木(みちき)龍次が左クロスを上げると、中央のFW城彰二に競りかけたブラジルのDFアウダイールとGKジダが交錯。こぼれたボールをMF伊東輝悦(現J3沼津)が押し込み、決勝点をもぎ取った。城さんは42歳になった今、この試合を「西野さんは分析に優れている。ブラジルの映像を見せられ、オーバーエージ枠のアウダイールとジダの間に穴があるので『アーリークロスで狙え』と言われた。それが見事に当たった」と振り返る。

 2002年から10年間指揮したガ大阪ではアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)優勝などタイトルを総なめにした。アトランタ五輪は強豪の相手にボールを支配されることを想定して守備的な布陣で臨んだが、ガ大阪では対照的に「2点取られたら3点取る」攻撃的なサッカーを展開した。MF遠藤保仁(38)は「勝っていれば守備的な選手を入れる監督が多い中で、西野さんはFWを投入する。勝負どころの感性はすごい」と言う。

 日本リーグの日立製作所(現柏)で西野監督と同期だった、清水の久米一正ゼネラルマネジャー(62)は「物静かな男。監督として長続きするのは、選手からすれば何を考えているか読めずに捉えどころがなく、神秘性があるからでは」。そんな西野監督の性格が垣間見えたのは昨年10月、五輪代表監督に就任した森保一(もりやす・はじめ)氏の記者会見だ。日本サッカー協会の強化責任者である技術委員長として同席した西野監督は、アトランタ五輪を振り返り「『世界に出るだけでなく、成果を出したい』といろんなことを協会やJOC(日本オリンピック委員会)に要求した。『この監督はおかしい』と散々言われたが、奇人だ、変人だと思われるのが成功に結びつく」と力説した。

 普段の言葉数が少ない分、いざという時に重みを増す。ガ大阪の監督だった08年度、古巣の柏と天皇杯決勝を戦った。「ヒーローになってこい」。0-0の延長後半、FW播戸竜二(38)=現J3琉球=に一言かけてピッチに送った。「準決勝に先発で出たが途中で交代させられ、決勝も先発で出られない悔しい思いがあった。ここで決めないといけないと思った」と播戸。決勝ゴールを決めると、西野監督の元へ真っ先に駆け寄った。

 実績は豊富な西野監督だが、不安材料も否めない。15年限りで退任した名古屋の監督を最後に、指導の現場を離れていた。チームを短期間で強化した経験も乏しい。12年のシーズン途中に再建を託されて監督に就任した神戸では、結果を出せぬまま3試合を残して解任された。また、ハリルホジッチ前監督は「選手との信頼関係が薄れた」という理由で更迭されたが、西野監督も技術委員長として強化に責任のある立場だった。本人も就任記者会見で「非常に責任を感じる」と口にした。

 逆風を、いかに追い風に変えるか。W杯の選手選考について「サプライズはないだろう」と推測するのは久米さん。「西野はそろばんが得意で数字に強く、確率を重んじる。8割の精度でプレーできる選手が集まれば、それなりの成績が出る。強い相手との試合だと精度が3割に落ちるような振れ幅の大きい選手は選ばない」

 城さんがキーパーソンに挙げるのはFW本田圭佑(パチューカ)だ。「メキシコである程度、結果を残している。経験値も高い。チームは守備的に入るが、本田は前でボールをキープできる」と見る。

 西野監督は火中のクリを拾った救世主となるか、棚ぼたでその立場を得ただけで終わるのか。答えはロシアで出る。


西野氏の監督歴と主な成績

アトランタ五輪代表=1996年 1次リーグ敗退(2勝1敗)

J1柏=98~2001年    99年ナビスコ杯優勝

J1ガ大阪=02~11年    05年J1優勝

                07年ナビスコ杯優勝

                08年天皇杯、ACL優勝

                09年天皇杯優勝

J1神戸=12年

J1名古屋=14~15年

 ※天皇杯は年度、ナビスコ杯は現YBCルヴァン・カップ


 ■人物略歴

にしの・あきら

 埼玉・浦和西高、早大を経て、日立製作所(現柏)でMFとして活躍した。1996年アトランタ五輪で日本五輪代表を指揮。ガ大阪で2005年にJ1初優勝、08年にアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制覇。柏、神戸、名古屋の指揮も執り、監督でJ1通算270勝は歴代最多。16年3月から日本サッカー協会の技術委員長を務めた。埼玉県出身。


 次回は29日に掲載予定です

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