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福岡市の防災アプリ「ツナガル+」のデモ画面。平常時のモード=福岡市提供
福岡市の防災アプリ「ツナガル+」のデモ画面。災害時のモード=福岡市提供

 防災学習ツールが多様化している。災害の疑似体験ができる施設から、スマートフォンのアプリ、遊びながら学べる卓上ゲームまで。「難しくて取っつきにくい」という防災のイメージは、すっかり「今は昔」だ。

     ●被害を可視化

     東京都葛飾区の新小岩北地区は、荒川と江戸川に挟まれた「海抜0メートル地帯」。ここを拠点に活動するNPO法人「ア! 安全・快適街づくり」(成戸寿彦理事長)は2002年の設立以来、地域の人たちとともに防災学習に取り組んできた。地理的な事情から特に重視するのが、洪水や高潮に対する意識の向上だ。

     成戸さんは「地域にどんな危険があり、いざという時にどう対処すればいいかを住民が具体的にイメージすることが、最も大事なことの一つ」と話す。東京大の研究所と13年に共同開発した無料防災アプリ「天サイ! まなぶくん」は、誰もが水害を「具体的にイメージ」できるアイテムになった。

     現実世界に仮想空間が重なり合う「拡張現実」(AR)の技術と全地球測位システム(GPS)を搭載した。子どもが通う学校や自宅など調べたい場所を設定すれば、洪水や高潮による浸水被害がどの程度か、立体的に視覚化される。法人メンバーの一人が自分のスマホで現在地を設定し、記者に見せてくれた。液晶画面には、人型図の頭頂部のはるか上で水面がゆらゆら揺れている映像と、「浸水深+5・0m」の文字。水害の規模がありありと想像でき、背筋が寒くなった。

     同法人によると、アプリを使った人たちからは「分かりやすい」と好評で、特に子どもに人気だという。成戸さんは「アプリによって、若い世代も防災に興味を持ってくれるようになった」と顔をほころばせる。

     ●モード切り替え

     最近では、自治体が配信する防災アプリも増えている。

     福岡市は4月11日、防災アプリ「ツナガル+(プラス)」の配信を始めた。「平常時モード」では住民同士が意見や情報を交換するコミュニティー・サークル用だが、大規模災害があると「災害時モード」へと自動で切り替わり、平時と同じ操作で避難所コミュニティー・サークルを作れる。モードを二つ設けた理由について、同市防災・危機管理課は「日ごろ使い慣れていなければ、有事に使いこなせないから」と話す。

     熊本地震(16年4月)では、「屋内が怖い」などの理由で指定避難所ではない公園などで車中泊した避難者が多かったため、行政は情報収集に難航した。その教訓から、「ツナガル+」は、どこにいてもアプリで避難所コミュニティー・サークルを作れば自動的に位置情報が市に伝わり、必要な物資などのSOS情報も入力・送信できる仕組みにした。

     東京都が3月、都作成の防災マニュアルの内容を盛り込んだ「東京都防災アプリ」の配信を始めたところ、約1カ月間でダウンロードが6万件を突破した。都防災管理課によると、一部の機能で英語、中国語、韓国語にも対応。「地震の時に最優先ですべきこと」などに関する○×クイズも入っていて、「普段は防災学習グッズとしても活用できる」という。

     ●疑似体験ツアー

     一方、防災学習施設「そなエリア東京」(東京都江東区)の目玉企画「東京直下72h TOUR」は、最大震度7の首都直下地震が起きた後、火災やがれきで危険な街を抜けて避難所を目指す疑似体験ツアーだ。参加者は専用のタブレット端末を渡され、画面に出る「エレベーターで地震に遭ったら?」などのクイズに挑戦しながら「被災地」の中を進む。

     参加者は年間約30万人に上り、幼い子ども連れの若い夫婦や修学旅行生が目立つという。施設は「アトラクション感覚で楽しめるので、若い人にもなじみやすい」と分析。「災害時は状況に応じたとっさの判断が試される。楽しみながら実践的な判断力が身につくツアーを目指したい」と意気込む。【夫彰子】

    使いこなすコツ

     紙芝居式の防災クイズ「なまずの学校」などの卓上ゲームをホームページで販売しているNPO法人「プラス・アーツ」。小倉丈佳(たけよし)・東京事務所長に、防災学習ツールを使いこなすコツを聞いた。

     ▽アプリの活用

     防災アプリは気になるものを複数ダウンロードし、使い勝手の良さを普段から確認・比較したい。電池消費が速いアプリもあるので停電時も使える充電器も用意して。無料通信アプリ「LINE(ライン)」は安否確認に有効。家族のライングループを作って日ごろからまめに連絡を取り合おう。

     ▽防災学習施設

     行って体験するだけで満足しがちだが、それでは何も身につかない。家具の固定や家族の安否確認方法をチェックするなど、「帰宅後はおさらい」を忘れずに。

     ▽ゲーム・教材選び

     文字情報より漫画やイラストが多いタイプの方が分かりやすい。ウェブ上には無料教材も多いので積極的に活用を。

    卓上ゲーム「GURA GURA TOWN」を紹介するNPO法人「プラス・アーツ」の小倉丈佳・東京事務所長=2018年4月25日、夫彰子撮影

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