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語学学校のクラスメートたちと記念撮影。アルビナさんは後列右から3人目。ディエルくんは前列中央

 4月から通う語学学校の先生たちのルーツが多様だったという話を前回は書きました。

 「じゃあ学生はどんな感じ?」という質問をいただきました。

 それは、毎日新聞国際面のような感じです。

 では、お手持ちの毎日新聞スマホアプリか紙面を開いていただいて! 8面か9面あたりに、実にいろんな国と地域のニュースが所狭しと並んでいますよね。語学学校も、例えるとそんな様子。多いのはフランスの近隣の国々や日本、韓国の学生たちです。

 一方、紛争などの現場となってその名前が広く知られるようになった地域と関わりを持つ学生もいます。

記事で読んだ国

 ウクライナと南アフリカの国籍を持つアルビナさん。2014年のウクライナ危機(※1)で、東部ドネツク州にあった実家を失ったといいます。結婚を機に南アへ移住したのはそれより以前のことですが、「もし実家で暮らしていたら、私は生きていたかどうかわからない。人生を充実させたくて、五つの言葉をマスターしようと決めました。まずはフランス語です」と話していました。

 スイスの学生・ディエルくんは、両親の祖国が旧ユーゴスラビアのコソボというアルバニア人です。ドイツ語字幕の付いた日本のアニメが好き。「オレヲダレダトオモッテルンダー!」というせりふを、おもむろに言ってみせてくれます。

 コソボは今年2月、セルビアからの独立を宣言してから10年を迎えました。民族間の対立はいまだ根深く、安定には遠い実情を毎日新聞ウィーン支局の三木さんが紙面で詳しく報告しています(※2)。

 両親が紛争を逃れて周辺国を転々とし、スイスで生まれたディエルくん。コソボに行ったことがあるかを尋ねると、「毎年行くよ。イタリアやスイス、ドイツ、アルバニアと、普段はばらばらに住んでいるいとこたちが大集合する。森を歩いたり、おしゃべりしたりしてすごく盛り上がるよ」。沖縄からの移住者や子孫が5年に1度、故郷に集まる「世界のウチナーンチュ大会」(テレビでしか見たことないけれど)を思い出しました。これはまるで、「ディエル家版」。

 なるほど、欧州にはこういうネットワークがあるのか、と思いました。戦火を逃れた人たちとその子供たちの、各国を股に掛けたつながりです。

 「アルバニア人って、他人との距離感がすごく近くて、おもしろい人たち。『他人に関心ありません』って顔、誰もしていない。でもコソボに帰って仕事するのは難しい。汚職もひどいし」。そう困った顔をしてみせました。

ルーアンはリラ(ライラック)の季節。民家の庭先などいたる所で咲いているのを見ながら通りを歩きます

道は険しいけれど

 語学学校の初級クラスでは「私は、どこそこの国に住んでいます」という表現を習います。(フランス語は国名によって男性名詞と女性名詞に分かれるので、それに付く冠詞も変化しますよ、覚えましょうね、というあの勉強です)

 でも、国名だけでは自己紹介が終わらない人がここにはたくさんいます。多様な背景を持つ人たちが、フランス語でつながっているのです。英語や中国語など話者が多い言葉に加え、それ以外にも耳を澄ます。そうすることで世界の複雑さを紙面に描くことにつなげていけたらと、自分の仕事を顧みました。

 とはいえ、同じ単語を何度も辞書で引いてしまうことも、「授業で使ったリスニング教材の書き起こしをメールで送ってください。自習に使いたいのです」と先生に頼んだのにちっとも届かないことも日常茶飯事。道は険しく、時に「35を過ぎてからフランス語なんて、身につくんやろか」と投げやりな気持ちにもなります。

 留学生活が始まってから、間もなく1カ月。こんな時は、クラスメートたちの存在が私を奮い立たせてくれます。【久野華代】


(※1)ウクライナ東部ドネツク州のルポ「距離置く米 続く紛争、ポロシェンコ政権衝撃」参照

(※2)「終わらぬ憎悪 コソボ独立10年」参照

久野華代

1983年三重県生まれ。東京外国語大学を卒業後、2006年に毎日新聞に入り北海道や東京で記者として働いた。日当たりの良いテーブルか、あたたかい布団で本を読むことが好き。寒い部屋ならルイボス茶をいれる。山菜採りも好き。

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