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余録

夏も近づく八十八夜、と聞けば…

 夏も近づく八十八夜、と聞けば「茶摘み」の明るい旋律が浮かぶ人は多いだろう。八十八夜とは立春から88日目のことで、5月初めの連休のころ。この季節に摘まれる茶葉が新茶となる▲農家の高齢化や後継者難もあって、茶畑の耕作面積や製茶工場は減少の一途をたどっている。一方、緑茶飲料の生産量はこの20年で5倍程度に増えた。茶ポリフェノール類の抗菌作用などが健康志向の消費者に受けているためだ▲新茶を摘んだ後、茶は夏から秋にかけても芽が伸びる。それを機械で刈り取った二番茶、三番茶がペットボトルなどの緑茶飲料に使われている。価格が安い上、メーカーの加工技術が進歩して少量でも良質の製品ができるようになった▲苦戦を強いられているのは、贈答用や家庭で飲む新茶だ。全国の生産量の4割を占める静岡県は、山間部の茶農家が多く、伝統的な手摘みの新茶が主体という。機械化が遅れ、近年の落ち込みは著しい▲高齢になっても医療や介護が必要ない期間を「健康寿命」と呼ぶ。静岡県は男女とも健康寿命が全国トップレベルにあった。「全国一のお茶の産地であり、日ごろからお茶をたくさん飲んでいる」を同県は理由の一つに挙げる▲厚生労働省が発表した最新の健康寿命ランキングでは、静岡県は男性6位、女性13位に後退した。茶農家の不振が直接影響しているわけではないだろうが気になる。野にも山にも若葉が茂るこの季節、急須でいれる新茶の味は格別だ。初夏の風味をもっと楽しみたい。

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