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読書日記

著者のことば 小崎哲哉さん 感覚に訴える空間

 ■現代アートとは何か 小崎哲哉(おざき・てつや)さん 河出書房新社・2916円

     現代アートの現状に対する危機感に貫かれた本だ。「ニューズウィーク日本版」ウェブサイトで2年近く執筆した連載をまとめた。マーケットに依存するアートワールドや大衆に迎合する美術館、批評の停滞など世界的な動きをジャーナリストの立場から描きつつ、現代アートの今とこれからを問うた。

     「グローバル化に伴う経済格差の拡大により、一握りの大富豪がマーケットを占有し、作品の価値を左右するようになった。作家やキュレーターといったプロが『アートとは何か』という根本をもっと考えないと、作品そのものが劣化していくんじゃないか」。自戒を込めて訴える。

     前半を構成するのは業界の裏話。2015年に開かれたアートの祭典「ベネチア・ビエンナーレ」の事例では、「反グローバル資本主義」を主題にしながら、まさにグローバル資本主義こそがアート界を支えているごまかしを突く。「世界最大の現代アートバイヤー」とされるカタールの文化戦略なども紹介。「作品売買の闘争が現代アートをめぐる状況を大きく支配している。ゴシップも現代アートを理解するための重要な要素だと思います」

     さらに、こうした世界の動向が日本でほとんど報じられない現状を憂える。「現代アートは定義上、国際的なもののはずなのに、この国のアートジャーナリズムは閉じている。例えば国際展の記事でも日本人作家ばかりを紹介するのはおかしい」。耳の痛い言葉だ。

     タイトルの本題をめぐって後半に展開される議論も読ませる。大量生産の既製品によるオブジェ作品を約100年前に発表したマルセル・デュシャン以降、あらゆる芸術は「真摯(しんし)な知的活動」となり、「もはや美を志向していない」と説明。絵画など二次元静止メディアの限界を指摘し、感覚に訴える空間の重要性を唱える。「私たちは目だけで見ていない。優れた現代アートは知性や五感を刺激するインスタレーションであるべきです」

     自身にとって鑑賞の喜びは「想像力を広げてくれること」といい、劇作家サミュエル・ベケットの名言を読者にささげる。<死せる想像力よ、想像せよ><文と写真・清水有香>

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