メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

くらしナビ・カルチャー

参拝ブームなのに、楽ならぬ台所 世界遺産の寺社、拝観料続々値上げ

拝観料が100円値上げされた東大寺の大仏殿。外国人観光客の姿も目立つ=奈良市で、花澤茂人撮影

少子化で修学旅行生減→収入減に直結 いたずら相次ぎ災害も→対策で支出増

 古くから信仰を集める一方で、多くの観光客も引きつける神社仏閣で近年、拝観料を値上げする動きが相次いでいる。今年1月には東大寺や興福寺(いずれも奈良市)が値上げするなど、関西の世界遺産に登録されている寺社だけでもこの4年で少なくとも9カ所が踏み切った。背景に何があるのか。値上げの現場を歩いた。【花澤茂人】

     「100円でも、積み重なるとつらい」。外国人観光客らであふれる東大寺大仏殿の前で、大阪府松原市から来た50代女性はそう嘆いた。東大寺は1月、大仏殿や法華堂などの拝観料を500円から600円に引き上げた。値上げは17年ぶりで、寺側は「史跡整備費や、お堂の修理、修繕費確保のため」と理解を求める。3年前に大仏殿で油のような液体がまかれたこともあり、防犯対策への出費も必要という。女性は「理解できるけれど、お堂を全てお参りするといくらになるかしら」とため息をついた。

    2018年1月にリニューアルオープンした興福寺国宝館。耐震化や防犯設備を充実させ、拝観料も100円上がった=奈良市で、花澤茂人撮影

     東大寺に近い興福寺でも1月、国宝館の拝観料を600円から700円に値上げした。国宝館は耐震化や防犯設備充実をはかった改装工事を終えたばかり。辻明俊(みょうしゅん)執事(40)は「文化財を守るため、こうした分野への対策が以前にも増して意識されるようになっている」と説明する。一方、伝統的な信仰の場でもある東金堂の拝観料は数十年前から300円を維持する。「参拝する方の負担は抑えたい思いもある」と胸の内を語った。

     拝観料の値上げが注目を集めたのは3年前の出来事。2015年1月、法隆寺(奈良県斑鳩町)が共通拝観料を1000円から1500円に値上げしたのだ。その年9月には薬師寺(奈良市)も特別公開時800円、非公開時500円だったのを300円ずつ値上げ。いずれも「参拝者の減少によって、文化財の維持管理が危機的な状況」という理由だ。奈良の有名寺院の多くは檀家(だんか)を持たず、拝観料は収入の柱。法隆寺の古谷正覚執事長は「少子化で修学旅行生が減った影響もある」と話す。16年1月に値上げした清水寺(京都市東山区)の担当者は「台風の影響で境内の崖崩れなども起こった。安心してお参りしてもらうため、しっかりとお寺の体力をつけたいというのが理由だ」と話す。

     国指定の文化財の場合、修理費は国が原則半額を補助する。文化庁伝統文化課によると、毎年、予算の約3割に当たる300億円超を保存修理の補助金に充てるが「指定物件が増え、台風や雪の被害もあって修理が順番待ちの状況」という。補助金が出ても、残りは自治体と所有者で負担するため、建造物で修理費が巨額に上る場合など寺社は億単位の出費が必要なこともある。指定されていない建物や仏像の修理費も無視できない。

     値上げの動きは寺社だけではない。世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)では「平成の大修理」を終えた15年3月から入城料を400円から1000円に値上げ。本格修理中の元離宮二条城(京都市中京区)では来年4月から、二の丸御殿を観覧する場合に600円の入城料とは別に400円の観覧料を徴収することにした。修理と値上げが連動しているようだ。

     折しも今国会では、政府が文化財保護法の改正案を提出。これまでの「保護中心」から、「活用との両立」へとかじを切るのかが注目されている。「拝観料値上げ」の波は、国民の宝である文化財をいかに次代へと受け継いでいくかという問いを投げかけている。

    金額に見合う価値を

     値上げの背景について、奈良大学の関根俊一副学長(教授、日本美術史)は「周りを見て、という判断もあるのでは」と指摘する。「博物館や美術館の特別展でも料金が上がり、文化財への対価が高まっている。寺院でも『あそこが上げるなら』と歩調を合わせる面もあるだろう」と話す。

     ただ拝観料の場合、宗教行為である「お布施」や「寄進」と位置づけられることが多く、通常は課税対象とならない。また宗教法人の収支が必ずしも公開されていないことから、値上げを疑問視する声や、収支の透明化を求める声もある。

     関根教授は「値上げを理由に観光コースから外され、結果として逆効果となる可能性もある。仏教やお寺をより身近に感じられるよう工夫し、拝観料以上の価値があると理解してもらうことが必要だ」と対応を求める。


    関西の世界遺産登録寺社の拝観料値上げの動き(いずれも大人の金額)

     ◆延暦寺(大津市)=2014年9月

     550円→700円(東塔、西塔、横川共通)

     450円→500円(国宝殿)

     ◆法隆寺(奈良県斑鳩町)=2015年1月

    1000円→1500円(西院伽藍、東院伽藍、大宝蔵院共通)

     ◆薬師寺(奈良市)=2015年9月

     800円→1100円(玄奘三蔵院伽藍公開時)

     500円→800円(同伽藍非公開時)

     ◆清水寺(京都市東山区)=2016年1月

     300円→400円

     ◆天龍寺(京都市右京区)=2016年9月

     100円→300円(庭園参拝料に追加される諸堂参拝料)

     ◆春日大社(奈良市)=2016年10月

     400円→500円(国宝殿)

     ◆高山寺(京都市右京区)=2017年4月

     600円→800円(石水院)

     ◆東大寺(奈良市)=2018年1月

     500円→600円(大仏殿、法華堂、戒壇堂それぞれ)

     ◆興福寺(奈良市)=2018年1月

     600円→700円(国宝館)

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 大リーグ 大谷、2失点で4勝目
    2. 損賠訴訟 男児頭部にレジ袋 葬儀会社相手取り遺族が提訴
    3. 登山家 栗城史多さんエベレスト下山中に遭難 遺体で発見
    4. アメフット 関学大選手側が被害届 悪質タックルで負傷
    5. ORICON NEWS 登山家・栗城史多さん死去 エベレスト下山途中、遺体で発見

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]