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余録

蕪村の句に「燕啼て夜蛇をうつ小家かな」が…

 蕪村(ぶそん)の句に「燕(つばめ)啼(ない)て夜蛇(へび)をうつ小家かな」がある。はりなどに巣を作るツバメの鳴き声でヘビが家に入ったのを知り、退治したのだ。守ってもらったツバメと、ヘビの侵入を教えてもらった人の共存共栄である▲「梁(うつばり)の燕」とは人家のはりに巣を作って子を守るツバメの親の愛情の深さをあらわす昔のことわざという。ツバメは人が洞窟で暮らした大昔から、人目のあるところに巣を作ってヘビやカラスなどの天敵から身を守る策をとってきた▲一方、人の方でも害虫を食べる益鳥として歓迎しただけではない。ツバメの巣は家に幸福をもたらすという俗信は西洋にも東洋にもある。日本でも「燕が巣を作るとその家は繁(はん)盛(じょう)する」「燕の巣くわぬ年は火災あり」などといわれた▲そのツバメの減少が話題となる近年である。数年前の調査では、都市部で衛生上などの理由で巣を取り払うケースは農村部の7倍の比率にのぼった。ツバメが守り神としてきた人間は、今では天敵に劣らず危険な存在になりつつある▲エサとなる虫の生息環境を奪ったのも人間である。巣を作りにくい住宅や建材が増えたのもツバメの子育てを阻むことになってしまった。人の出入りする場所で巣作りをするツバメには空き家が増えているのを逆風とみる向きもある▲心変わりの激しい人間に頼った生存戦略をツバメたちは悔いているかもしれない。ただ今やその人間も、古くからの友が運んできてくれた幸福のかけがえのなさに気づき始めた。あすから愛鳥週間である。

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