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社説

イタイイタイ病認定50年 重い知見、世界で教訓に

 日本の工業化や戦後の高度成長などの過程で環境が破壊され、多くの人の健康が損なわれた。その教訓を忘れてはならない。

     富山県の神通川流域で発生したイタイイタイ病が公害病と認定されてからきのうで50年を迎えた。水俣病など四大公害病の中で、政府が認定した初のケースだった。

     イタイイタイ病は、亜鉛鉱山から流出した重金属のカドミウムが生活用水などを通じて人体に蓄積し、発症した。骨がもろくなって簡単に折れてしまい、患者は「痛い、痛い」と泣き叫んだ。

     1910年代からあったが「風土病」などと見なされ、放置された。地元医師が61年、カドミウムが原因だと指摘したが、鉱山を運営する三井金属鉱業は否定し続け、国の動きも鈍かった。国が公害病と認めたのは、住民らが集団訴訟に踏み切った後の68年だった。

     認定患者は200人で、うち195人は亡くなった。前段階とされる要観察者も数少なくなった。国や県は、患者らのケアに万全を期さねばならない。

     鉱山に残るカドミウムの監視も続ける必要がある。現在、川や水田から検出されるカドミウムの数値は自然界レベルに下がったが、環境を保つには新たな流出防止が前提だ。

     住民は三井金属と協定を結び、毎年、立ち入り調査をしている。昨年には、豪雨時でもカドミウムが流出しないよう、対策を申し入れた。

     得られた知見を国際的に活用する工夫もいっそう求められる。中国や東南アジアではカドミウムによる川や米の汚染が広がっているためだ。

     イタイイタイ病の病理研究はいまも続く。富山大はこの春、患者約100人の臓器の検体などを収蔵する資料室を整備した。解剖資料の分析によって、腎臓障害の発症メカニズムの解明も進みつつある。

     6年前に設立された富山県立イタイイタイ病資料館は、東南アジアなど海外からの来訪者のために多言語による館内説明に取り組んでいる。

     公害病をめぐっては、国際的な水銀規制を定めた「水俣条約」が発効したことも記憶に新しい。イタイイタイ病は決して「過去の問題」ではない。負の教訓を、国境を超えて共有すべきだ。

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