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(2)使い捨ての包装は全廃へ 欧州のプラスチックごみ対策最新事情

「脱プラスチック」を掲げたオランダのスーパー「エコプラザ」=アムステルダムで2018年4月17日、八田浩輔撮影

 オランダのスーパーがこの春、石油を原料とする従来のプラスチック包装を一切使わない食料品専門のコーナーを期間限定で作った。プラスチックごみを減らすための規制や取り組みが急速に進む欧州でも「プラスチックゼロ」を掲げるスーパーは例がなく、欧米の主要メディアが一斉に取り上げた。

     「プラスチックゼロ」に乗り出したのは、オランダ国内に74店舗を抱えるスーパーチェーン「エコプラザ」。4月末までの2カ月間、プラスチックを容器や包装に使わない食料品を並べたコーナーをアムステルダムの店舗の一角に試験的に設けた。約700種の商品にはカット野菜や加工肉のほか、パスタなどのプライベートブランドも含まれる。包装は、紙、木材、ガラスや自然に分解されやすい性質をもたせた植物由来のプラスチックなどで代用した。

     同社は、有機食材やそれらを加工した製品を専門的に取り扱っている。通常のスーパーと比べて価格は1~2割ほど高いが、健康や環境問題への意識が高い消費者だけの特別な店というわけではない。類似のスーパーは欧州主要国の都市部にありふれており、富裕層だけでなく中間層も広く取り込んでいる。

     今回の取り組みの背景にあるのは、自然環境下で分解されない通常のプラスチックごみによる海洋汚染の深刻な悪化だ。世界の海岸に打ち上げられるごみの85%はプラスチックだとされ、米ジョージア大などの研究チームの推計では毎年500万~1300万トンものプラスチックごみが世界の海に流れ込む。オランダに近い北海で9割以上の海鳥の胃からプラスチックが検出されたという調査報告も、現地では身近な問題として関心を高める要素になった。

    プライベートブランド商品の包装も植物由来の生分解性プラスチックに切り替えた。従来の石油由来のプラスチックと異なり自然に分解されやすい性質がある。ただし利点を生かすには分別を徹底する必要がある=アムステルダムで2018年5月4日、八田浩輔撮影

    価格転嫁なし

     欧州連合(EU)域内で発生するプラスチックごみの4割は食品などの包装材として使われたものだ。エコプラザの取り組みはそこに焦点をあてた。企画を提案した英国の環境NGO「プラスチック・プラネット」のシアン・サザーランドさん(57)は、電話での取材に趣旨をこう説明した。

     「数日で使い切る食べ物や飲み物を包むためのものが、(分解されず)半永久的に存在し続ける。それは間違っていると思いませんか?」「食品の包装自体をなくすことは現実的ではありません。それでも(食品包装の)『プラスチックゼロ』は今すぐ実現できる。それを伝えたかったのです」

     サザーランドさんがこだわったのは、パッケージの変更による価格転嫁を避けることだった。飲食や化粧品業界での複数の起業経験が彼女の考えの土台にある。

     「店舗にも消費者にも負担がない方法でなければ続きません。すべてのスーパーにできる方法で実現したいと思いました」「代用品として使ったのはすべて普通に入手可能な素材です。これまで誰もやろうとしてこなかっただけなのです」

     エコプラザでは「プラスチックゼロ」商品の種類を1000点程度に増やし、年内に国内の全店舗に展開を拡大することを検討している。

    EU「30年までに使い捨て包装ゼロ」

     これまで欧州でプラスチックごみを減らす取り組みといえば、使い捨ての買い物袋(レジ袋)への対応が中心だった。

    オーストラリア西部の海岸で死んでいたミズナギドリの体内からプラスチック製のストローと赤い風船の切れ端が見つかった=オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が2016年12月撮影、AP

     アイルランドが2002年、消費者を対象にしたレジ袋税を世界で初めて導入。それを機にレジ袋有料化の動きは他国にも広がり、ベルギーやフランスも最近、使い捨てレジ袋の配布禁止に踏み切った。EU全体では19年までにレジ袋の使用量を10年比で8割削減する目標を掲げる。削減目標値が大きいのは対策が遅れる東欧諸国が押し上げているためだが、その点を考慮しても日本のように民間企業と消費者の自主的な対策に委ねていては実現できない数字である。

     加えてEUは今年、30年までにすべてのプラスチック包装材を再生利用可能なものにするとの新たな目標を打ち出した。すなわち使い捨てのプラスチック包装は無くすということだ。EUでは域内で発生する年2600万トンのプラスチックごみのうち、リサイクル用に収集されるのは3割に満たず、残りは埋め立てるか焼却されている。新目標ではリサイクル率についても30年までに55%に引き上げることを盛り込んだ。

     一連のプラスチックごみ戦略を発表した記者会見で、EU欧州委員会のティメルマンス第1副委員長(規制担当)は「今プラスチックの生産と利用の方法を改めなければ、私たちの海は50年には魚よりプラスチックが多くなる」と警告した。

     来年3月にEUを離脱する英国はさらに先を進み、医療用途を除いてストローや綿棒を含む使い捨てのプラスチック製品の全面販売禁止を検討している。

    中国の圧力

     欧州の対策を後押しするもう一つの理由は、世界最大の資源ごみ輸入国だった中国の政策転換だ。

    EUから中国へのプラスチック廃棄物の輸出量(単位はトン)

     中国は1990年代半ばから、大量のプラスチックごみを世界中から輸入してきた。国内で不足する製造業の原料を補う措置で、さまざまな製品に再生加工することで経済成長を下支えした。輸出する側にとっても、自国より安価にリサイクルできる利点があった。しかし中国政府は昨年7月、産業公害対策として生活由来のプラスチックごみの輸入禁止を決め、半年後の今年1月には実行に移したのだ。

     困ったのは、事実上のごみ捨て場として中国に依存してきた日米欧などの先進国だ。EUの場合、輸出するプラスチックごみの8割以上の行き先は中国が占めていた。EU統計局によると、昨年1月には16万トンだったEUから中国への輸出量は、輸入禁止後の今年2月には97%減となる5700トンまで急減。新たな受け皿としてマレーシア、ベトナム、トルコのほかオランダなど域内国への輸出が軒並み増えているが、それらの国の処理能力では中国の穴を埋めることはできない。その結果、行き場を失ったプラスチックごみの焼却や埋め立てが増えれば、環境をより悪化させる恐れがある。

     自国でリサイクル処理をしきれない廃棄物を他国に輸出するこれまでのやり方が行き詰まっているのは明らかだ。中国の輸入禁止措置がリサイクル技術や新素材の開発を加速させるとの楽観論も聞かれるが、根本的な解決策はプラスチックごみの廃棄量を劇的に減らすしかない。欧州はその一歩を踏み出した。当然日本も例外ではないが、取り組みは大きく立ち遅れている。【八田浩輔】

    八田浩輔

    ブリュッセル支局 2004年入社。京都支局、科学環境部、外信部などを経て16年春から現職。欧州連合(EU)を中心に欧州の政治や安全保障を担当している。エネルギー問題、生命科学と社会の関係も取材テーマで、これまでに科学ジャーナリスト賞、日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞(ともに13年)。共著に「偽りの薬」(毎日新聞社)。Twitter:@kskhatta

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