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社説

米国がイラン核合意離脱表明 中東の対立をあおるのか

 平地に波乱を起こし中東の争いをいたずらにあおる結果になりはしないか。大きな不安を禁じえない。

     トランプ米大統領がイラン核合意からの離脱を表明した。2015年にオバマ政権が他の5カ国(英仏独中露)とともにイランと結んだ合意では、同国の核兵器保有を防げず制裁解除によって「残忍な政権」(イラン)を潤すだけだと結論づけた。

     しかも、解除した対イラン制裁を再発動し「最高レベルの制裁」を科すというのだが、核の番人・国際原子力機関(IAEA)はイランが合意を守ってきたことを認めている。

     英仏独も米国の離脱に「遺憾と懸念」の共同声明を出した。米国が問題にするミサイル開発などが明確な合意違反と言えるかは疑問で、米国の「離脱ありき」の姿勢が目立つ。

     環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や気候変動対策の「パリ協定」からもトランプ政権は離脱を表明した。国際合意を尊重せずオバマ前大統領の功績を塗りつぶすのがトランプ政権の特徴とはいえ、核合意離脱にはより危険な側面がある。

     この合意にはイスラエルとサウジアラビアが強く反対していた。トランプ氏が大統領として最初にサウジを訪問し巨額の武器売却に応じたのも、エルサレムをイスラエルの首都と認めて米大使館移転を表明したのも、両国を中心とした中東再編成の思惑を抜きにしては語れない。

     秋の中間選挙に向けてイスラエルに親近感を持つ福音派キリスト教徒を引き付ける狙いもあるだろう。

     だが、両国への露骨な肩入れはイスラエル対アラブ、イスラム教スンニ派(サウジなど)対シーア派(イランなど)の対立を深め、中東不安定化に拍車をかける恐れがある。仮にイランが内政上の理由で合意を離脱し核開発を再開すれば、今度こそ深刻な核危機が生じかねない。

     注目すべきは、トランプ氏が北朝鮮へのメッセージとして離脱を表明した点だ。米朝首脳会談を控えたトランプ氏が厳密な合意をめざす姿勢を見せたこと自体は歓迎する。

     だが、今回の離脱表明は真摯(しんし)な協議で合意しても米国は簡単にほごにする、という例証にもなりうる。米国への信頼をなくしては元も子もない。国際合意への不満は関係国との協議で解決を図るのが筋だ。

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