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この50年の世界

1968~2018 第4部・パリ五月革命/下 伸長する保守勢力 「寛容な社会」評価二分

五月革命を批判するロマン・エスピノさん(中央)=フランス南東部リヨンで2017年10月、賀有勇撮影

 フランス社会のあり方を変えたとされる1968年の五月革命。調査会社IFOPが昨年公表した世論調査では、78%が「フランスの歴史にとって重要な出来事だった」と回答した。仏社会の大きな節目であったことは広く国民に認知されている。一方で、その社会的な功罪についての評価は今も定まっていない。

     「我々は68年(五月革命)世代の犠牲者だ」。2012年にインターネット上に公開された「宣戦布告」と題された2分半余りの動画のなかで、若いフランス人女性がこう訴えかける。

     動画を作製したのは、フランスを拠点に欧州各地に支部を広げている若者らによる保守系団体「ジェネレーション・アイデンティティー」。移民が増加する状況下、欧州人のアイデンティティー(独自性)を守ることを理念に創設された。

     フランスへの難民申請者は昨年1年だけで10万人を超え史上最多を記録。メンバーのロマン・エスピノさん(24)は「五月革命で勢いづいた左翼が作り上げた『寛容な社会』が欧州へ押し寄せる移民問題を生み出した」と批判する。

     メーデーの今月1日、各地でマクロン大統領の改革に反発する労働組合のデモがあり、暴徒化した一部のデモ隊が米ファストフード大手のマクドナルドの店舗などに放火する騒ぎとなった。

     同様に米系企業の襲撃がきっかけの一つとなった五月革命について、エスピノさんは「今の左翼デモと同じ。自己欲求を押し通すための破壊運動で何も生み出さなかった」と酷評。保守系紙フィガロのコラムニスト、エリック・ゼムール氏(59)も「家父長制や宗教、国家や性別による区別を拒否し、全てのアイデンティティーを破壊した」と指摘し、「自由を旗印に権利を叫ぶ一方で、誰も社会に対して責任を負わなくなった」と批判する。

     フランスでは近年、極右政党「国民戦線」が支持層を広げており、五月革命批判も目立つ。五月革命に関する著書もある左派系紙リベラシオンのローラン・ジョフラン編集長(65)は、こうした批判について「自由を得る代償にアイデンティティーを失ったとのうそを広め、現状の不満を『昔は良かった』と根拠のない懐古主義に結びつけているだけ」と反論。「そんなに、長時間労働や男女不均衡の存在する社会に戻したいのか」と問いかける。

     五月革命時、ジョフラン氏は、警察とデモ隊が衝突した学生街「カルチェラタン」の高校に通っていた。校内では連日のように教職員と生徒の話し合いが持たれた。話し合いの結果、生徒が勝ち取ったのは、教師と対等な関係に近づくための教壇の撤去と長髪を禁じた校則の撤廃だったという。

     否定的な評価が以前よりも目立つようにも見える五月革命。あれは一体何だったのか。「私たちのようなささいなものも含め、国民それぞれが、自分たちの思い描く自由や平等や個人としての尊重を獲得しようとした。複雑そうにみえるがシンプルな出来事だった」。問いかけにジョフラン氏はそう即答した。【パリ賀有勇】

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