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的川博士の銀河教室

499 探査機「インサイト」打ち上げ 初めて火星の内部構造を探る

 さる5月5日、新しい火星探査機が米国西部のバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられ(写真)、探査機「インサイト」は火星への一人旅を始めました。インサイトは火星内部構造を探査するという史上初の任務を担います。ランダー(着陸機)を軟着陸(なんちゃくりく)させ、火星の地震(じしん)、自転の微妙(びみょう)なふらつきを測定するほか、約5メートルの深さまで入れる熱流量計で地下からの熱の流れを記録し、地面の下の構造を探るのです(図1、左下の丸い機器が地震計(じしんけい))。

     地球内部の構造を調べるのに地震計が使われていることは知っているでしょう。インサイトも主な機器として、「原子1個分の揺(ゆ)れ幅(はば)も感知する」(NASA)という超高精度(ちょうこうせいど)の地震計を載せています。地球に比べると、火星には人間がいないので、人工的振動(じんこうてきしんどう)がなく、地震計の精度を高めるには有利ですよ。

     火星探査機はこれまでたくさん打ち上げられ、表面の探査によってその地形については随分(ずいぶん)と詳(くわ)しく分かっています。でもその複雑な地形がどうやってできたかを知るには、地下の構造を調べる必要があります。

     地球でも、火山が噴火(ふんか)したり、地震が起きたりすることは昔から分かっていましたが、それがなぜ起こるのかという根本の原因は、プレートテクトニクスなど画期的な考え方が提出され、地下のマントルなどの動きを研究して、やっと最近になって分かってきたことですね。

     火星にも、太陽系最大の山といわれるオリンポス山(高さ2万6000メートル)などの巨大(きょだい)な火山群(図2)があり、地下のマグマの様子などが推定されています。その証拠(しょうこ)をしっかりと地下の観測によって裏付け、いつごろ火星のプレート移動は終わったのか、地球の火山とどう違(ちが)うのかなど、さまざまな疑問を解き明かそうとしています。そのような火星と地球の比較研究(ひかくけんきゅう)が、金星や水星など他の太陽系天体の成り立ちを研究するのにも大いに役立ちます。

     インサイトは、高さ約1メートル、重量約700キログラム(ランダーは350キログラム強)という比較的小型の探査機で、2007年に打ち上げた火星探査機フェニックスの設計を活用し、地震計や熱流量の測定器は欧州(おうしゅう)から提供してもらうなどで、大幅(おおはば)なコスト低減を図りました。火星到着(とうちゃく)は11月下旬(がつげじゅん)の予定。どんなデータを送ってくるか、楽しみに待つことにしましょう。


    的川泰宣(まとがわやすのり)さん

     長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。


    日本宇宙少年団(YAC)

     年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


     「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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