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来春の採用についての合同企業説明会。学生たちは企業のブースを回り、社員から話を聞く=福岡市中央区のヤフオクドームで、矢頭智剛撮影

 就職活動中の学生がセクハラを受ける「就活セクハラ」。被害を受けた学生の中には、誰にも相談できず泣き寝入りするケースもある。セクハラを受けた時、またセクハラを起こさないために、どうすればいいのか。

     ●面接で性的な質問

     「彼氏はいるの?」「どこからが付き合ってるんだと思ってるの?」。今年3月に東京都内の大学を卒業した女性(22)は、人材紹介会社が実施する面接練習で、性的な質問を受けた。間仕切りで仕切られた狭いスペース。机を挟み正面に座った中年の男性スタッフは、初対面の女性のプロフィルを聞き出す中で、個人的な質問を挟んできた。「ちゃんとしたところまでだと何回なの」「そういうこと込みの付き合いだったの」……。性交渉をほのめかすような問いかけが続いた。「この後予定はあるの」「また会ったら飲もうね」と誘いも受けた。

     「最初は場を和ませるための話の糸口かと思った」と女性は振り返る。だが、質問を重ねられるたびに嫌悪感が増した。大学のキャリアセンター(就職支援担当課)に信頼できる女性のキャリアカウンセラーがいたため、相談しようと決めた。

     相談を受けた大学側は、女性から話を聞いた後、男性の勤務先に事実確認を依頼した。相手はセクハラを認め、退職した。大学の担当責任者は「デリケートな話だったので、最初に相談を受けた女性職員と自分の2人だけで対応した」と振り返る。

     女性は被害を受けた直後、家族に相談し、詳しくメモしておくように言われた。「日にちがたつと記憶もあいまいになる。メモのおかげで詳細にやりとりを伝えられた」と話す。大学側も「男性を特定し事実確認する際に、当時のことを詳しく覚えていたことが役に立った」という。

     ●学生、相談に尻込み

     就活セクハラの被害実態は明らかになっていない。毎日新聞が在学生数が1万人以上の都内の私立大学20校に聞いたところ、2016年度から今月までの約2年間で大学側が被害として記録した相談は、15校で計9件止まり。他に「年間10件以内」との回答が1校あった。就活セクハラに注意喚起をしている大学は1校にとどまった。大学担当者からは対策を講じていない理由を「被害の申し出がほとんどない」とする声も上がる。

     だが、相談件数が少なくても被害が少ないとは言えない。性暴力の被害者支援に携わる目白大の斎藤梓・専任講師(被害者心理)は「性被害を相談すること自体が被害者にとって負担になる。また、どこからがセクハラなのか学生自身も分からない場合があるのでは」と指摘する。

     問題を抱えた大学生が最も頼りにしやすいのは大学だ。それぞれの大学は、就活支援の担当部署が、就活に関するトラブルを一括で受け付けている。学内に人権相談窓口を設けているところも多く、就活セクハラの相談もできる。

     しかし、就活全般への支援体制の手厚さは大学によってかなり差がある。多くの学生が学内のキャリアセンターで指導を受ける大学もあれば、大学側があまり関与せず、学生が一人で活動を進めるケースもある。就活中にフェイスブックを通じて知り合った志望企業の男性社員から、セクハラ被害に遭った都内の20代女性は「大学のキャリアセンターは遠い存在だった。相談は思いつかなかった」と話す。大学に相談した冒頭の女性ですら、「小さなことで大騒ぎする学生だと大学に思われたらどうしようという思いもあった。普段からキャリアセンターを利用していなかったり職員と信頼関係ができていなければ、(セクハラを受けたとは)言えなかったと思う」。大学が相談窓口になり得ていない実情が垣間見える。

     ●企業は社員教育を

     売り手市場の近年の就活。リクルートワークス研究所が4月末に発表した19年春の大学の新卒採用の求人倍率は1・88倍で、7年連続の上昇となった。その半面、学生から人気の高い従業員数5000人以上の大手企業の新卒求人倍率は0・37倍と狭き門で、競争の激しさは変わらない。東京大大学院の本田由紀教授(教育社会学)は「日本の就活は、採用基準があいまいなまま、内定まで長期にわたって複数の関門がある。売り手市場でも、企業側に気に入られるかどうかですべてが決まる就活では、セクハラやパワハラは容易に起こりうる」と指摘する。

     就活セクハラを防ぐために、まずは企業がハラスメントを許さない社員教育を行うことが大切だ。厚生労働省大阪労働局は、過去に不適切な質問として事業者に指導した事例をウェブサイトで公開し、学生の性別や出自、思想、家庭環境などで就職差別をしないよう企業に求めている。

     ハナマルキャリア総合研究所代表でキャリアコンサルタントの上田晶美さんは、企業側に個室での1対1の面接は避けるよう助言、学生にも自衛策を提案する。OB・OG訪問で、夜遅い時間に会うことは避ける。平日の日中に会うことが難しい場合、話を聞くのは喫茶店など酒を飲まない場所を選ぶ。さらに、面接などで学生がセクハラや不適切と感じた質問を受けた際は、「『それは採用基準と関係のあることですか』と聞いていい」とアドバイスする。覚えておくと心強いせりふだ。

     就活生が企業側に強い態度で臨むことは難しいかもしれない。だが、就活セクハラがあるかないかは、安心して働ける企業を選ぶ一つの目安になるとも言える。本田教授は「社員がセクハラをするような企業は、就職できたとしても職場でさらなるハラスメントが待っている可能性も高い。志望企業が労働者の権利を守る会社かどうかを学生が見極めて」と呼びかける。【塩田彩】


    厚生労働省大阪労働局が指導した不適切な面接の質問

    <事例1>

    会社 女、採用してもええけど、すぐやめるやろ。

    学生 やめません。

    会社 自分、すぐ投げ出すやろ。

    学生 そんなことはないです。女の人が働いていたことはあったんですか。

    会社 泣いてすぐやめる。男ばっかりの中に女一人で大丈夫か。

    学生 はい。若い男の人もいるんですよね。

    会社 去年も若い男入っているし、男が好きやったらやっていけるんちがう、変な言い方やけども。

    <事例2>

    会社 女の人がお茶くみや掃除をするのをどう思いますか。

    学生 やれる人がやればいいと思います。

    会社 私は、男性より女性にやってもらいたいなあ。

    学生 じゃあ、喜んでお出しします。

    会社 人付き合いは得意な方ですか。彼氏はいますか。

    学生 ……。

     ※大阪労働局ウェブサイトより作成

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