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社説

強制不妊手術の調査 歴史的経緯の検証も必要

 旧優生保護法の下で障害者らに強制不妊手術が行われた問題で、厚生労働省は救済に向けた実態調査を始めた。全国の都道府県・市区町村に調査書を配布し、手術を受けた個人の特定を進める。

     強制不妊手術を受けたのは1万6475人だが、資料が残っているのは2割程度にとどまる。自治体が「捨てた」としていた資料がその後発見された例もある。医療機関や福祉施設に資料が残っている可能性もあり、徹底した調査が求められる。

     戦前、優生思想に基づいて障害者の不妊手術を認める法律は各国にあったが、日本のように戦後になって強制不妊手術を徹底してきた国は他にない。どうして人権侵害の政策が進められたのか、過去の経緯についても実態を解明する必要がある。

     「悪質な遺伝因子を国民素質の上に残さないようにするため」。議員立法による旧優生保護法案が1948年に国会に提出されたときの説明だ。反対意見はなく、全会一致で可決された。手術費や入院料、付添人の旅費も国が全額負担した。

     その後、国会では手術件数が少ないことが度々批判された。それを受けて厚生省(当時)は手術を徹底するよう自治体に通知を出した。そのための予算も増やした。

     52年には遺伝性ではない精神疾患も保護義務者の同意で強制手術を可能とする法改正が行われた。

     当時は人口爆発への懸念から出生数を抑える政策が重視されていたとはいえ、これだけ執拗(しつよう)に障害者の不妊手術を国が推し進めたのは不可解だ。諸外国では優生思想への批判や反省から、障害者の権利擁護に関する議論が高まっていたのにである。

     96年に優生保護法は母体保護法に改定された。98年には国連が強制不妊手術の被害者に補償をするよう日本政府に勧告した。しかし、「当時は合法だった」というのが政府の見解で、今日に至るまで被害者の救済には背を向けてきた。

     現在、超党派の議員連盟がワーキングチームを設置、来年の通常国会に救済法案を出す準備をしている。

     だが、それだけでは足りない。

     独立性の高い第三者委員会を設置し、国会や政府の責任についても検証すべきである。形式的な調査と補償では真の被害救済にはならない。

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