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激動の半島情勢

識者に聞く/4 圧力一辺倒に限界 元日朝国交交渉代表・美根慶樹氏

美根慶樹氏

 今回の南北首脳会談は、北朝鮮の本気度を測るという点で重要な意味を持っていた。板門店(パンムンジョム)宣言では「完全な非核化」との文言を盛り込んだものの、具体的な内容は入らなかった。しかし、これはむしろ正解だったと思う。

     非核化について北朝鮮と本格的に交渉できるのは米国だけだ。2012年に米国で開かれた1・5トラック(半官半民)の会議に北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外務次官(現外相)らと同席した。その際にも北朝鮮側は米国との交渉の意欲は示す一方で、韓国との2国間対話には関心を示さず、「米国との関係が定まれば、おのずと韓国との関係も決まる」との立場だった。

     こうした姿勢を続ける北朝鮮と協議するにあたり、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は全体の流れをうまくとらえた。非核化に関する最低限の意思を確認した上で、米朝首脳会談の妨げにならず、むしろうまくつながるようサポートした。

     非核化に対する北朝鮮の言動は現時点では確かに不十分だが、それは途中経過であるから、とも言える。現時点で核放棄を決めているかどうかは分からない。ただ、米朝首脳会談は「本番」であり、そこでの議論の行方次第では、非核化に向けた最終的な決断を明確にする可能性はある。朝鮮労働党中央委員会総会などに関する北朝鮮の報道からは、すでに国内への説得に着手しているようにも見える。

     北朝鮮は核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)に関する技術が一定レベルに到達したという自信を持っている。そのため技術力があれば、一度放棄しても情勢が変化した場合は再び作ればよいと考えている可能性がある。経済協力の見返りに、いったん(核兵器や施設を)全部はき出しても採算が合うと判断していても不思議ではない。

     日本はこれまで圧力一辺倒の方針でやってきた。これでは狭すぎる。北朝鮮から対話を持ちかけられた場合に機会を失ってしまう。米国と北朝鮮の間で何らかの合意が実現した場合、日本もその方向性に合わせられるように(02年に当時の小泉純一郎首相と金正日(キムジョンイル)総書記が署名した)日朝平壌宣言以降、今まで積み上がってきた議論の経過を整理し直す必要がある。日本人拉致問題についても、解決に向けもっと主体的に取り組むべきだ。【聞き手・林哲平】=つづく


     ■人物略歴

    みね・よしき

     1943年生まれ。東京大卒。米ハーバード大で修士号取得。外務省で軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉政府代表などを歴任。2009年に退官し、14年から平和外交研究所代表。

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