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悼む

作家 内田康夫さん=3月13日死去・83歳

執筆への執念の火 内田康夫(うちだ・やすお)さん=敗血症のため、3月13日死去・83歳

 浅見光彦シリーズの新作となる「孤道」の新聞連載が始まる前、「君と組むと、何か起きそうだなあ」と作家は笑った。これにはわけがある。

     小説執筆中、内容を追いかけるように現実に何か起こるというシンクロニシティーが発生する作家は結構いる。内田さんはことにその引きが強いことで知られていた。毎日新聞で2000年4月から連載された「箸墓幻想」は、すごかった。連載2回目として送られてきた原稿に、奈良県にある古墳の発掘が描かれていた。1カ月後、同古墳から遺物出土のニュースがもたらされた。その後に報道された旧石器捏造(ねつぞう)事件も、作品との共通項に驚かされた。

     こんなことがあったからこその冒頭の言葉だった。本当に何か起きただろうにと思うほどに悔しい。

     病で中断した「孤道」の完結編募集プロジェクトのために、今後の展開のヒントなどを尋ねると「それがわかっていれば僕が書くよ」と笑わせた。けれど、「最後まで書きたかったなあ」と口にするのを何度聞いたことか。この後書く予定だった作品の構想もたびたび話してくれた。

     脳梗塞(こうそく)で倒れる半年前、体調不良で一時入院したことがある。この時休載は考えなかった。とはいえ体調は万全でなく、集中力も長続きしない。口述筆記を試みるもうまくいかず、締め切りは迫る。すると内田さんは、夜な夜な午前3時ごろに起き出して執筆したのだ。その姿を想像すると、鬼気迫るものを感じた。

     妻で作家の早坂真紀さんによると、最期に「やっぱり自分で終わらせたかった」と言って、涙をぽろりとこぼしたという。執筆への執念の火を、ずっと身の内にともしていたのだ。【内藤麻里子】

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