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福利厚生充実で人材確保

女性社員の爪のケアをする外ノ池絵美さん(左)=東京都新宿区で、中村藍撮影

 <くらしナビ ライフスタイル>

     少子高齢化で働く人の数が減り、優秀な人材の確保が企業の課題になっている。雇用情勢が改善し、働き方改革も進む中で、カギを握るのが福利厚生。独自でユニークな施策は、企業ブランドの構築や採用に効果的だ。最新動向を追った。

     ●ネイリストが常駐

     広告代理業「アウローラ」(東京都新宿区)は、女性に人気の「ネイル施術」を福利厚生に取り入れている。派遣契約を結んだネイリストが常駐し、ジェルやスカルプ、ケアカラーといったメニューを無料で施す。指先が整うと、自然と身なりを気遣うようになり、社内の雰囲気が明るくなる。指先のリラックスはストレス軽減にもつながる。

     営業職の三浦冬乃さん(26)は「ネイルをしないのは化粧をしないのと同じ」と言うほどの愛好家。勤務中に爪が割れても、即座に対応してくれるのがありがたい。「サロンに月平均5000円以上を支払っていた分がかからず、デザインの要望も聞いてくれる」と満足そうだ。形を整えたり、甘皮をケアしたりする男性用コースもある。

     同社は、このサービスを「オフィスネイル」と名付けた。社内だけでなく、主にパソコンに向き合う業務や、外部と接する機会の多い営業職向けとして他の会社に提案している。会社側は小さなスペースと一定の商材を用意し、民間資格を持つネイリスト(約9000人が登録)と派遣契約を結ぶ。3年前に取り入れた都内の大手IT企業では、平日の始業時から終業時まで予約でいっぱいだ。利用率は85%に上る。「同僚や上司に話せない悩みもネイリストになら……」と明かす社員もいて、まるで学校の「保健室」のような役割を果たしているという。

     現在、複数の会社がこのサービスを導入している。ネイル事業部の和田晃治部長は「自社も、導入していただいた企業も、従業員の満足度が格段に上がり、アンケートでもサービスの継続を求める声が多い。会社のロゴを爪にあしらうのも、営業ツールとして面白いのではないか」と話す。

     サービスはネイリストの待遇改善にもつながっている。都内のネイルサロンに勤めていた外ノ池絵美さん(30)は1年半前からIT企業と派遣契約を結び、同社内で施術を担う。「顧客の新規獲得やスキンケア商品の販売といったノルマもなく、施術に専念できる」と笑顔だ。サロン勤務当時は、社会保険に未加入で有給休暇を消化できず、残業も多かった。それだけに、収入が増え、働く環境も改善したことに喜びを感じている。

     ●帰属意識生む効果

     「失恋休暇」「親子3世代勤務祝い金」「プロスタイリストによるコーディネート指南」--。他社との差別化を図ったユニークな施策や、福利厚生専門の外部委託会社を使って大手並みの制度を確保するベンチャーや中小企業も現れた。近年は、医療や健康、介護、育児などの生活支援に関する福利厚生費が伸びている。優秀な人材を確保するうえで、その重要性は高まるばかりだ。

     一般社団法人「企業福祉・共済総合研究所」(東京都港区)によると、人材募集を巡っては、報酬の多寡に限らず、働きやすさや安心できる職場環境を示すことも選択肢になってきた。賃金(報酬)と福利厚生にはそれぞれ特徴があり、労働の評価を全て賃金に換算するのではなく、一部を福利厚生として提供する方が会社と従業員の双方にメリットがある=表。属性や労働成果に関わりなく、公平に利益を受けられるのがポイントだ。主席研究員の秋谷貴洋さん(51)が言う。「福利厚生は、会社側から従業員に対して『会社の良さ』を伝えるメッセージ。従業員は会社の姿勢に信頼や安心を感じ、帰属意識や働く意欲が高まるのです」

     社員食堂でヘルシーメニューを出す取り組みが注目を集め、書籍出版や食堂経営などにつながり、中途採用者の人気企業として知れ渡ったケースは有名だ。従業員の意欲向上のみならず、自社のブランド構築や人材採用といった経営戦略にもつながるのだ。

     ●旅行、運動会復活も

     福利厚生は、時代とともに変わってきた。バブル経済期以降は景況感に左右される傾向にあるが、雇用や社員ニーズの多様化に応じたサービスが主流になりつつある。ペットの家族化を背景にした犬や猫の忌引休暇▽外部での知見を仕事に役立ててもらう副業許可▽コーヒーをいれる専門家「バリスタ」の常駐--。

     その一方で、社会基盤が整ったことに伴い、ほぼ役割を終えたものがある。代表的なのが社員食堂だ。明治・大正期には、鉱山や工場で集団給食を提供する場だった。その後も「栄養補給」の観点から設けられてきたが、外食産業の発展で数を減らしていく。ただ、現在は健康保持やコミュニケーションの場として見直される動きもある。また、かつて結核などの療養施設としての機能を果たした保養所。「余暇の楽しみに」と、バブル期には豪華な施設が新設されたが縮小・廃止の道をたどった。若い頃の低賃金を補っていた社員寮や社宅も、民間住宅の供給率が上がって最小限度に集約されていった。

     半面、復活傾向にあるのが、バブル期以降に廃れた社内運動会や社員旅行だ。きっかけは2011年の東日本大震災。秋谷さんは「人と人との『絆』が見直され、職場のような近い関係の人との一体感を求める日本人の特徴が読み取れる」と分析。「会社と従業員の双方がメリットを感じられる施策を展開できれば、結果的に経営効果が期待できる」と話している。【矢澤秀範】


    賃金と福利厚生の主な違い

                賃金                                    福利厚生

    ▽成果との関係     成果などに応じた支給                            成果などに関わりなく公平

    ▽課税上の特徴     原則的に全額課税                              一部を除き原則的に課税されない

    ▽社会保険料の範囲   全て対象                                  一部を除き原則的に対象外

    ▽社会保険との給付調整 原則、社会保険の給付から減額                        一定条件の場合には上積みが可能

    ▽社会的認知      本人のみ                                  家族も利用できるため、社会的認知に広がりがある

    ▽その他        使い道が自由。しかし、賃金で負担できる範囲でしか利益を受けることができない 使い道が限定。しかし、賃金で負担できない範囲の利益も受けることができる(社会保険等)

     (企業福祉・共済総合研究所への取材を基に作成)

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