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あした元気になあれ

端っこも世界なんだ=小国綾子

加古里子さんの絵本「とこちゃんはどこ」。赤い帽子に黄色い浮輪を持って、スイカ割りを見ているのが主人公のとこちゃん=小国綾子撮影

 イギリスの絵本「ウォーリーをさがせ!」が発売から30周年を迎え、話題になっている。でも群衆の中から主人公をさがし出す絵本というなら、日本にだって「とこちゃんはどこ」があるよ、と言いたい。先日、92歳で亡くなった絵本作家、加古里子(かこさとし)さんの1970年の作品だ。

     見開きページいっぱいに、大勢の人々が描かれている。場面は、デパートや動物園や海水浴場。迷子になってしまった主人公の「とこちゃん」を群衆の中からさがし出す絵本だ。同じように見えて少しずつ違う「大勢」の絵に子どもたちが夢中になることを、加古さんはウォーリーが誕生する前から、ちゃんと知っていたのだ。

     「物尽くし」と呼ばれるほど、絵本に「大勢」を描く人だった。「おたまじゃくしの101ちゃん」では101匹ものおたまじゃくし。「からすのパンやさん」では羽の色や表情の違うたくさんのカラスやいろいろな形のパン。

     でも、それはいったい、なぜ?

     加古さん、著書でこんなふうに明かしている。

     <僕がなぜ繰り返し「大勢」を描くのかと言えば、自分が世の中の中心だとはとても思えないからです。この世界は多様であり、自分はそのどこか端っこにいる。おたまじゃくしではないけれど、それこそ今にもこぼれそうな隅っこの、縁の方にいる>

     自分の絵の“師匠”は子どもたち、と語り、勤めの傍ら貧困地域の子ども会活動に関わり続けた。子どもの輪の中に飛び込み、一人一人を観察した。カブトムシの好きな子。ダンゴムシを集めるのが好きな子。誰一人同じではないことを子どもたちから教わった。だから「大勢」をただ集団としてではなく、それぞれ異なる個として、違いを大切に描いたのだろう。

     窓の外は鮮やかな新緑。でも「五月病」の季節。新しい職場や学校にうまくなじめず、居場所のない思いでいるかもしれない誰かに今、加古さんが「物尽くし」の絵にこめた思いを届けたい。

     <「端っこも世界なんだ」、そう言いたいんだと思います。真ん中だけがエライんじゃない、端っこで一生懸命に生きている者もいるんだよ、ってね>

     絵本を描く時、彼がいつも心に思い浮かべていたのは、「世界の端っこに出てしまって、ぽつんとひとりでいる子どもの姿」だった。(統合デジタル取材センター)

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