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社説

エルサレムへの大使館移転 米国外交史に残る汚点だ

 米国が在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムへ移転させた。イスラエルの主張をくんでトランプ大統領が「首都エルサレム」を認定し、同国の建国70年記念日に合わせた。極めて残念なことだ。

     エルサレムは西側にユダヤ人が、東側にパレスチナ人が多く住む。ユダヤ教とイスラム教の聖地もある。イスラエルは東西を「不可分の首都」だとして実効支配するが、パレスチナは東側を将来の独立国家の首都だと位置づけてきた。

     だからこそ国連はイスラエルのかつての首都宣言を承認せず、加盟国はエルサレムに大使館を置かないよう気遣ってきた。聖地をいかに分け合うかを含むエルサレムの帰属問題は、当事者双方の協議で決まるよう国際社会は見守ってきた。

     ところが中東和平交渉を幾度も仲介し、双方に最も公平に配慮すべき立場の米国が均衡を崩してしまった。長年の仲介の努力が水泡に帰しかねない。

     トランプ氏が大使館移転に踏み切ったのは、親イスラエルである米国の福音派キリスト教徒からの支持獲得のためとされる。中東和平に対する特別な戦略があるようには思えない、身勝手な判断だ。

     今後にもたらす負の影響は少なくない。まずトランプ政権が仲介を行う限り、エルサレムの帰属は和平交渉の議題から外され、イスラエルの首都だと既成事実化してしまう恐れがある。パレスチナにとって悲願の首都化は絶望的となる。

     また、長年国家独立を待たされてきたパレスチナ人の屈辱感はさらに増し、イスラエルへの憎悪が募るのは確実だ。既に自治区では大規模抗議デモがイスラエル軍との衝突に発展し、大勢の死傷者が出ている。

     こうして見ると首都認定と大使館移転は、米国外交史に残る汚点であり、暴挙とも言えるだろう。

     14日はイスラエルの建国日だが、15日はそれに伴い大勢のパレスチナ難民が発生した「ナクバ(大惨事)の日」となる。パレスチナ側はさらなる抗議デモを予定している。

     日本は大使館を移転せず、2国家共存による解決への支持を強調している。国際社会とともに米国に対し、大使館移転の再考と撤回を粘り強く説き続けるべきだ。

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