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2018春/2 平和へ、思い真っすぐ 核廃絶運動で広島の名誉市民に 坪井直さん(93)

松井一実市長(右)に平和への思いを語る坪井直さん=広島市中区で

 4月5日、春の柔らかな日差しが差し込む広島市役所の一室で、坪井直さん(93)=同市西区=は松井一実市長らと笑顔で向き合っていた。核兵器廃絶や被爆者援護に長年取り組んできた功績から3月に名誉市民に選ばれ、この日は市長から称号を受け取る晴れの舞台だった。

     「余生は短いんですけど、みなさんと平和な世界をつくることに、名前の通り『素直』に燃えて燃えて燃え尽きるまで頑張ります」。緑と白のリボンのメダルを首にかけ、ちゃめっ気のある表情で力強く宣言した。出席者から大きな拍手が起こった。

     同じ日、プロ野球・広島東洋カープの試合中、対戦チームの応援席から「原爆落ちろ」とやじが飛ばされたというニュースが駆け回った。大のカープファンは「絶対に許せん」と表情を曇らせ、被爆国ですらこんな言葉が使われてしまう現状に「(核廃絶は)まだ遠いと思うよね」と大きなため息をついた。

     がん、心臓病、貧血、眼底出血……。「年がら年中悪魔に追われるんですよ」。最近は外出の機会がめっきり減り、講演など公の場に出るときは車椅子が欠かせなくなった。

     2年前の5月27日には、現職の米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏と立って向かい合い、固い握手を交わしていた。オバマ氏に「短い時間で資料館を見た、被爆者の話を聞いた、それで原爆の問題が分かるはずがない」という趣旨を伝えた一方、「一緒に核兵器のない世界をつくろう」と呼びかけた。核なき世界は近づいたように感じたが、昨年は北朝鮮の核実験などで緊張が高まった。

     坪井さんは被爆体験を伝えるため20回以上海外を訪れ、1990年代に北朝鮮を2度訪問した。99年には平壌で初めて開かれた原爆展に出席した。訪れた人たちは「核兵器はない方がいい」と感想を述べ、「よき理解者ができた」と感じた。朝鮮半島の非核化で両首脳が一致した4月27日の南北会談。具体的な道筋は見えなくとも「北朝鮮にも非核化の意義は通じる」と信じ、米朝首脳会談の結果を待つ。

     自宅では海外訪問時の資料などの整理に取り組む。「さみしい話ですけど、少しずつ」。次の世代へ、積み重ねてきた知恵と思いを託す準備をしている。<文・高山梓 写真・木葉健二>=つづく


     ■人物略歴

    つぼい・すなお

    広島工業専門学校(現広島大)の学生だった20歳の時に被爆。中学教諭となり、「ピカドン先生」と名乗って生徒に体験を語った。2000年から日本被団協代表委員、04年から広島県被団協理事長。

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