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クラフトビールで乾杯する男性客=東京都目黒区の中目黒タップルームで

 ゴクゴクと喉に流し込んでいたビールの飲み方が、最近はゆっくりと香りやコクを楽しむスタイルに変化している。クラフトビールが台頭し、大手メーカーの「香り」を前面に出した商品も目立つ。個性的な味わいを「鼻」で楽しんでみよう。

     ●クラフト飲み比べ

     クラフトビールを多数そろえる東京都目黒区の飲食店「中目黒タップルーム」は連日、若者や外国人でにぎわいを見せる。生ビールサーバーで注ぐ定番の12種類に加え、季節限定の10種類も提供。友人と定期的に訪れる会社員、宇久田朝史(ともふみ)さん(25)は「飲み比べて好みの一杯を決めるのが楽しい」と話す。アルコール度数が高いので満足感もあり、香りはもちろん、泡の味が好きだという。「気に入ったビールは醸造所にまで足を運ぶようになりました」

     3月下旬、店で試飲が行われていたのは、香りを意識した新商品「黄金IPA(インディアペールエール)」。厳選された5種類のホップを配合、パッションフルーツやシトラスを思わせるフルーティーな香りが漂う。中山仁志店長(35)は「看板メニューのピザだけでなく、さっぱりしたサラダにも合います」と太鼓判を押した。

     ●醸造所ごとに個性

     クラフトビールとは、小規模な醸造所(ブルワリー)で職人が製法にこだわって少量生産したビールを指す。クラフトは「手作りの工芸品」などを意味する英語だ。1994年、酒税法改正で製造業者に義務付けられている年間最低製造量が大幅に引き下げられ、各地に醸造所が誕生。「地ビール」ブームを巻き起こしたが、品質に当たり外れがあることなどから沈静化した。2000年代後半から、職人が造る味や香りにこだわった商品が見直されるようになり、人気が再燃している。

     一般的なビールは低温で発酵し飲み口がすっきりした「ラガー」と、高温で発酵し香りの強い「エール」に大別できる。日本の大手メーカーが大量生産する銘柄は、ラガーの「ピルスナー」に分類され、喉越しが爽快で苦みのキレがいい。「とりあえずの一杯」で選ばれるものだ。だがビールの種類は100以上あるとされ、ホップの香りと苦みが特徴のペールエール、苦みとかんきつ系の香りが特徴的なIPA、フルーティーで苦みがほとんどないバイツェンなど味わいはさまざまだ=表。

     クラフトビールの醸造所は全国で300カ所を超えるとされる。醸造が盛んな米国や欧州各国の影響を受け、品質を追求。それぞれ個性的な味わいを売りにする。大手メーカーも14年にキリンビールが本格参入し、以後は各社も次々と新商品を投入している。

     ●「できたて」全国へ

     各醸造所の自信作が全国に広がるには、物流面での工夫も欠かせない。

     食品卸大手の三菱食品(東京都大田区)は、前出の「タップルーム」を運営するベアードブルーイング(静岡県伊豆市)ら全国六つの醸造所とクラフトビール「J-CRAFTシリーズ」を共同開発。業界初となる10度以下での「チルド輸送」に取り組んでいる。ろ過で酵母を除いたり、殺菌のための加熱をしたりする必要がないため、ビール本来の味と香りが損なわれない。酒類事業本部の田中和久・戦略オフィス担当部長は「醸造所でしか味わえない、できたてのおいしさを全国に届けられるのが強み」と語る。

     また、香り重視のビール人気に合わせ、ビアグラスの形状も変化しつつある。これまではジョッキが定番だったが、ふちがすぼまった専用グラスの売り上げが好調だという。「香りを愉(たの)しむ」シリーズと名付けたグラスを3種類販売する「東洋佐々木ガラス」(東京都中央区)は、「独特の香りをグラスに閉じ込めることで、飲むときに香りが立ちやすくなる。ビールに合わせてグラスを選ぶと、よりおいしく味わえます」(企画戦略グループ)と話す。

     4月の酒税法改正でビールの定義が「麦芽比率50%以上」となり、副原料の規定も緩和された。香り付けに香辛料や果実、ハーブ類などが使えるようになり、さまざまな新しいビールが店頭に並ぶ。ビール出荷量が年々減少する中、新たな市場として注目されている。【矢澤秀範】

    川野亮さんお薦めの(左から)「僕ビール、君ビール。」「キャプテンクロウ エクストラペールエール」「南信州ビール インディアペールエール」

    「炭酸は弱め、少しずつ味わって」

    川野亮さん

     クラフトビールの魅力とは--。情報サイト「クラフトビール東京」を運営する川野亮さん(59)は「アートと同じように造り手による自己表現と価値の提供があり、生きている喜びを与えてくれる」と語る。

     クラフトビールは炭酸が弱めで、独特の苦みが少なくフルーティーな味の種類も多い。たくさんの量を飲めなくなった年配の人にもお薦めだ。「喉越しを楽しむこれまでの飲み方ではなく、少しずつ、むしろ温度変化を楽しむように味わって」と川野さん。さまざまな食事に合わせてもいいし、ビールだけをじっくり味わうのもいい。

     川野さんに好みの商品を教えてもらった。クラフトビール最大手のヤッホーブルーイングがローソンと共同開発した「僕ビール、君ビール。」は、酸味と苦みがあり花のような香りが特徴的だ。信州東御市振興公社が製造する「OH!LA!HOビール」の「キャプテンクロウ エクストラペールエール」はホップの香りがしっかり利いている。また、特産のリンゴなどフルーツの香りを味わえる「南信州ビール」シリーズも飲み応えがあるという。いずれも長野県内に醸造所があるが、近くのスーパーやコンビニエンスストアで購入できる。

     川野さんは「国内では地ビールが誕生してから、まだ20年程度。これから技術も向上し、さらに飲む楽しみが増えるはず。飲み比べてクラフトビールの世界を楽しんでほしい」と話している。


    主なビールの種類

    ピルスナー   黄金色で喉越しがよい。日本の大手が大量生産

    ペールエール  香りが豊か。クラフトビールの入門に薦められる

    IPA     「インディアペールエール」の略。苦みとかんきつ系の香りが強烈

    バイツェン   フルーティーで苦みはほとんどない

    フルーツビール フルーツの香りがビールの香りと重なり合う

    スタウト    黒ビールの一種ですっきりとした味わい

    バーレーワイン アルコール度数が10%超のものも。熟成した香り

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