メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

縁の下の誇り

虐待防止へ根本見直す=渡辺守成

 

     米国体操界で発覚した性的虐待の被害者やその家族にお会いしたのは、3月3日の「桃の節句」でした。女の子の健やかな成長を願うはずの日です。

     米国体操協会のチームドクターだったラリー・ナサル被告が五輪金メダリストら200人を超える女子選手に治療目的と偽り、性的虐待をしたとして最長で禁錮175年の判決を受けました。しかし、被害者らが訴えたのはナサル被告への恨みではなく、被告を生み出したスポーツ界に対する不信感でした。

     競技を始める時はコーチと親、子どもは対等な立場です。ところが、五輪出場が目標になると、コーチが絶対的な権力を振るうようになり、子どもは親に本当のことを話さなくなります。親に告げ口すれば、ますます暴力や虐待などがエスカレートするからです。ある被害者の母親は「家族が崩壊してしまった。これがスポーツなんですか」と涙ながらに話していました。

     国際体操連盟(FIG)は対策として三つの柱を掲げました。一つ目は各国の国内競技団体やコーチ、選手を教育する部門の設置です。指導には国際オリンピック委員会の教材を使います。二つ目はFIGから独立した財団を作り、選手のための相談窓口「レスキューセンター」の運用を始めます。いつでも、どこからでも連絡することができ、法的な支援を受けられます。独立組織なので、FIGから介入されることはありません。三つ目はFIG選手委員会が創設する「アスリートネットワーク」。選手からの情報提供により早く対応します。

     我々の競技で発覚した不祥事ですが、今回の事件は氷山の一角で、スポーツ界は根本から仕組みを見直す必要があります。同様の事例はカナダなど他の国でも広がり、サッカーなど他競技でも指摘されています。我々は「スポーツとは何のためにあるのか」という問いを突き付けられていることを理解しなければいけません。

     私は処罰の仕組みを整えることが最優先と考えていましたが、選手の話を聞いてもっと根が深い問題だと気づかされました。コーチ教育から変えなければいけません。先頭に立ち取り組む覚悟です。(国際体操連盟会長)=随時掲載


     ■人物略歴

    わたなべ・もりなり

     北九州市出身。東海大在学中にブルガリアで新体操と出合い、ジャスコ(現イオングループ)入社後に普及に尽くす。1997年に日本体操協会理事、2009年から専務理事。13年からFIG理事を務め、16年10月に会長に選ばれた。59歳。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 大リーグ 大谷、2失点で4勝目
    2. 損賠訴訟 男児頭部にレジ袋 葬儀会社相手取り遺族が提訴
    3. 登山家 栗城史多さんエベレスト下山中に遭難 遺体で発見
    4. アメフット 関学大選手側が被害届 悪質タックルで負傷
    5. ORICON NEWS 登山家・栗城史多さん死去 エベレスト下山途中、遺体で発見

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]