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ヒバクシャ

2018春/3 シリアの子、73年前と重ね 西山進さん(90)

 <非核を現実に documentary report 233>

     「あの子たちは無事だろうか」。福岡市南区の反戦漫画家、西山進さん(90)は思わずつぶやいた。米英仏が先月、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして関連施設を軍事攻撃したとのニュースを知った時だ。35年前に現地を訪問していた西山さんの脳裏に、元気に駆け寄ってきた子供たちの人なつっこい笑顔が浮かんだ。

     西山さんは1983年8月、シリアの芸術家団体に招かれてダマスカスなどを訪問した。当時も中東では激しい紛争が続いていた。

     街に出ると、シリアの子供たちは日本人を見るのは初めてらしく、好奇心いっぱいの様子で駆け寄ってきた。西山さんが持参したスケッチブックに動物の漫画や子供の似顔絵を描いてあげると、キャッキャッと喜んだ。戦災孤児たちが学ぶ学校に招かれ長崎での被爆体験を語った。「たった1個の原爆で約7万人が一瞬のうちに殺された」。生徒たちはじっと聞いていた。

     73年前、米軍が長崎に原爆を投下した翌日、爆心地から約3・5キロの三菱重工長崎造船所で働いていた当時17歳の西山少年は、上司から命令を受けて同僚5人と爆心地近くへ救援に向かった。途中、5人の子供が目を押さえたままの格好で丸焼けになり、母子が真っ黒焦げになって倒れていた。救援先の兵器工場では動員された少年やもんぺ姿の少女たちが工作機械の下敷きになって息絶えていた。

     戦後、上京して漫画家になり被爆者運動にも没頭した西山さんはペンと言葉で「ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、ノーモアウオー」と叫び続けてきた。そんな西山さんには、子供や市民が戦争で傷つけられる光景が73年前の長崎と重なって見えてならない。

     2016年に胃がんの手術を受けて原爆症と認定され、昨年から肺気腫のために酸素吸入をしながらの生活を続けている。取材中、西山さんはペンを握り、あの時、次から次へと笑顔で駆け寄ってきたシリアの子供たちを漫画に描き始めた。

     無事ならばもう立派に父親や母親になっているはずだ。90歳とは思えないほど確かな手つきであっという間に描き上げると、その漫画を記者に託して言った。「戦争だけは駄目だ。爆弾の下にいる子供たちのことを絶対に忘れてはいけない」<文・樋口岳大 写真・津村豊和>=つづく


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     ■人物略歴

    にしやま・すすむ

     長崎の爆心地から約3・5キロで被爆。炭鉱労働者などを経て漫画家に。今も日本原水爆被害者団体協議会の「被団協新聞」などで反戦反核をテーマに連載を続ける。福岡市原爆被害者の会顧問。

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