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悩み多き世代? 80后と90后

 突然ですが、皆さんは“80后(バーリンホウ)”“90后(ジューリンホウ)”という言葉を聞いたことがありますか?少し中国語を勉強したり、中国に行ったりしたことのある方なら、ご存じかもしれませんね。“后”とは、日本の漢字に直すと“後”。つまり、80后とは、1980年以降に生まれた人たち。90后とは1990年以降に生まれた人たちを、それぞれ指す言葉です。彼らの世代が始まる直前の1979年には、中国で“一人っ子政策”が始まりました。1組の夫婦が持てる子供の人数を原則1人と決め、人口増加に一定の歯止めをかけようとしたのです。ですから、大多数の80后、90后世代はみな一人っ子です。

     もっとも、一人っ子政策は2016年に撤廃され、今は、すべての夫婦に2人目の出産を認める“二人っ子政策”に変わりました。人口の増加を目指した政策転換でしたが、2017年の出生数は1723万人と前年より63万人少ない結果となりました(中国国家統計局 2018年1月20日発表資料より)。自分たちは一人っ子として育ったのに、大人になったら急に2人の子供を持つように勧められても、戸惑いや様子見が先行するのは、むしろ普通の反応でしょう。80后や90后は、こうした政策の影響を直接受けた、悩み多き世代であることが、こうしたデータからも分かるような気がします。

    日本の80后に比べて中国の80后は……“焦り”を抱えた世代

     中でも80后は、この言葉が生まれた2000年ごろは、新たな世代の若者を指す言葉でした。今では30代後半の人もいる立派な中堅世代です。彼らの話に入る前に、日本でのこの世代の人たちのイメージを知りたいと思い、ちょうどこの世代にあたる日本人の男性の友人に話を聞いてみました。友人のAさんは日本のある大手企業の社員で、結婚していて子供もいます。自分自身が子供のころは、“ドラゴンボールZ”や“仮面ライダー”などのアニメや特撮シリーズをテレビで見ていて、任天堂のスーパーファミコンや、ソニーのプレイステーションなどでゲームをしていたそうです。中学生の頃にはじめてインターネットを使い、ウェブゲームやチャットにはまっていたといいます。就職活動は冬の時代で、なかなか内定がもらえず苦労したそうです。同年代の友人の中には転職を繰り返す人もいますが、世代全体の人数が比較的少ないため会社によってはポストが余っており、転職したことで収入アップにつながった人も多く、ちょっとうらやましいと話していました。

     一方中国の“80后”にはどのような人が多いのでしょうか。私の知る限りでは、基本的には日本人の友人と同じような状況のようです。ただ、世代人口は中国の80后のほうが圧倒的に多いと言われ、2億2000万人を超えているとみられています。これは日本の総人口よりも1億人あまり多い数です。彼らのイメージとして私が最初に思い浮かぶキーワードは“焦り”です。日本では“ゆとり”というキーワードが80年代末から90年代生まれ全般を通じて話題になることが多いようですが、それとはまた異なるイメージです。

     80后の焦りの原因は、いろいろあるようですが、大きな原因の一つは仕事です。80后の親世代に当たる50年代から60年代生まれの中国人にとって、仕事とは“铁饭碗(ティエファンワン/鉄でできたお茶わんという意味で、ここから食いはぐれのない手堅い安定した仕事を指す言葉になりました)”がベスト!という考えがあります。しかし、80后の世代の人たちは中国の改革開放路線の真っただ中で、急激に変化していく中国社会を見続けてきました。例えば、白物家電で有名な中国メーカー、ハイアール(海尔)が1999年にアメリカで初の現地生産を開始。同年には、先日早稲田大学でも講演会を行ったジャック・マー会長が率いるアリババグループ(阿里巴巴集团)が創業しています。こうした時代の変化の波に乗り遅れまいと、転職を前提として就職したり、自らも起業しようと考えたりする人が多くなりました。実際に起業して大成功を収める人も出ましたが、多くの人は淘汰(とうた)の波にさらされて脱落していきました。

     二つ目の原因は、親たちとの関係です。特に女性たちの問題として、中国では、女性の幸せは結婚という考えが親世代を中心にいまだに根強く、20代後半で結婚しても晩婚というイメージがあります。さらには、親の介護の問題も考え始めます。“無事に”結婚できたとしても、どちらかが80后であれば一人っ子なので、自分が一手に親の老後の面倒を見なければなりません。お互いに一人っ子同士の場合、悩みはさらに深刻になります。まさにちょうど今ごろの時期に、親世代が定年を迎えているため、こうした事を考慮して少しでも貯蓄を増やし、親も自分も将来的に困らないようにキャリアプランを立てている人が多いのです。よく80后は一人っ子世代の先駆けとして“甘やかされてワガママに育った”とか、“中国の経済成長の恩恵を受けてぜいたくに消費ができる世代だ”と言われがちですが、一方でこうした負の側面の悩みが深いのも、この世代の特徴でしょう。

    知ってほしい80后の“柔軟さ”

     ここまで80后の“焦り”というキーワードについて話してきましたが、実は私はもう一つ彼らを語るうえで大事なキーワードがあると思っています。それは“柔軟さ”です。常に大きな変化と新しい価値観を受け入れ続けてきた世代なので、比較的自由な発想の人が多いのです。中国国内にとどまらず、国外に出て活躍する人も少なくありません。今からちょうど10年前の2008年5月12日に発生した四川大地震では、最初の1年で300~500万人のボランティアが現地に駆けつけたといわれています。その多くが80后の若者たちでした。彼らは携帯電話で連絡を取り合い、インターネットを駆使して情報を集めました。そして、中国全土に“ボランティア”という概念を根付かせました。

     いま、日本を訪れる観光客の中国人たちの中にも、80后、90后と呼ばれる人たちがたくさんいます。さまざまな経験を経て、日本の同世代の人たちともたくさんの共通点を持っている世代です。ぜひ、あなたの隣の80后や90后の人たちと、仕事上でもプライベートでも交流してみてくださいね。もしかしたら、お互いに一生支え合える親友同士に、なれるかもしれませんよ。

    北京に留学中の早稲田大学の学生さんたちに会いました。中国では80后や90后、日本では「ゆとり」や「さとり」という若者を指す言葉がありますが、こうした若者たちがお互いに外の世界に目を向けてくれることが、私は一番うれしいです。

    段文凝

    (だん・ぶんぎょう)中国・天津市出身。2009年5月来日。同年まで天津テレビ局に所属。2011年4月より、NHK教育テレビ『テレビで中国語』にレギュラー出演。(2017年3月卒業)2014年早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース卒業。日中間を行き来し講演活動を行い、「かわいすぎる中国語講師」として幅広い層に人気を得ている。2015年、2016年に毎日新聞夕刊「ひ・と・も・よ・う」で取り上げられた。2017年現在、NHKWORLDのラジオにレギュラー出演。舞台や映画などを中心に女優としても活躍している。

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