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余録

歴史ある温泉地に出かけると…

 歴史ある温泉地に出かけると「文人墨客(ぼっかく)に愛された」という宣伝文句を目にする。昔の芸術家はよく長逗留(ながとうりゅう)して小説を書き、絵を描いた。うらやましい限りだが、中でも夏目漱石は温泉好きで有名である▲「坊っちゃん」の愛媛・道後温泉、「草枕」の熊本・小天(おあま)温泉、「明暗」の神奈川・湯河原温泉……。漱石は「国民作家」、作品は「国民文学」と言われる。文芸評論家の川村湊(みなと)さんは著書「温泉文学論」で「『国民的』温泉文学の雄とも称せられるべき」と書いている▲漱石が大分の別府温泉にも行ったかどうかは別として、25日からここで「世界温泉地サミット」が初めて開かれる。温泉のある国内外の自治体代表らが参加し、観光や医療、エネルギーをテーマに議論する▲日本の温泉といえば、湯治文化を忘れてはならない。江戸期、庶民も湯治を楽しんだ。日本温泉協会によれば期間は3週間程度だったらしい。伊勢参りやこんぴら参りの行き帰りに一晩だけ温泉地に泊まる「一夜湯治」もあったというから、こちらは現代並みにせわしない▲環境省は昨年、温泉地の活性化に関する有識者会議を開いた。健康寿命を延ばすことや、心身のリフレッシュに温泉をどう役立てるか。まさに働き方改革に通じる▲小天温泉が舞台の「草枕」にもこうある。「智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」。昔よりストレスの多い現代社会なら、なおのこと温泉の効用がありがたい。

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