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社説

「万引き家族」にカンヌ最高賞 若い映画人たちの励みに

 家族のきずなとは何か。日本社会の谷間から投げかけた大きな問いが、世界をつかんだ。

     南仏で開催されていた映画祭の最高峰、カンヌ国際映画祭で、是枝裕和(これえだひろかず)監督の「万引き家族」が最高賞のパルムドールを受賞した。

     日本人監督作品としては、1997年の今村昌平監督の「うなぎ」以来21年ぶり、5作目の快挙だ。

     テレビのドキュメンタリー制作畑出身の是枝監督は、作家性が強いことで知られる。社会を独自の視点で切り取るオリジナルの脚本を執筆することが多く、家族のさまざまな形を見つめ続けてきた。

     年金不正受給事件がきっかけという受賞作は、祖母の年金を当てに、足りない分は万引きでまかなう家族の姿を描く。断罪するのではなく、セーフティーネットからこぼれた彼らを、同じ高さの目線で追いながら、社会のひずみをあぶり出した。

     その向こうに浮かび上がるのは、格差の拡大にきしむ世界の普遍的な問題だ。芸術作品に昇華された、是枝監督の問いかけの鋭さと深さが、審査員を動かしたに違いない。

     個性を持った映画を作る若手が生き残っていくのは容易ではない。是枝監督は「カンヌが育ててくれた」と言う。コンペティション部門参加は2001年に始まり、今回が5度目。カンヌで世界の目にさらされることで、自らのスタイルを追求し、世界に通用する強度を身につけていった。いまや河瀬直美監督や黒沢清監督と並ぶ常連だ。授賞式後の「若い人たちにもどんどん目指してほしい」との言葉はそんな思いの表れだ。

     日本の映画界は好調が続いている。昨年の興行収入は、2285億7200万円に上る。しかし、邦画約600本の公開本数中、上位10本が興収の3割近くを占める。

     挑戦的な主題や表現の作品は、なかなか大衆受けしないのが現状だ。かといって、ビジネスの成功を追い求めてばかりでは、映画文化は先細りする。

     社会性と娯楽性を両立させてきた是枝監督が世界で認められたことは、後に続く若い映画人の大きな励みになるだろう。

     多様な映画があってこそ、豊かな芸術文化が育まれる。それは観客にとっての幸福でもあるはずだ。

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