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情報公開と説明責任=粥川準二(科学ライター)

 5月14日、石川県農林総合研究センター畜産試験場で、世界初のクローン牛「のと」が死んだ。「のと」は1998年7月、近畿大学と同センターの共同研究で双子の「かが」とともに生まれた。19歳10カ月で、自然死だと見られる。「かが」は元気だという。

     「のと」と「かが」が生まれた当時、筆者はバイオテクノロジーに興味を持ち始めたばかりで、すぐに雑誌の仕事を企画して見に行った。事務所で対応してくれた人に技術的なことを質問しようとすると、「質問にはいっさい答えないように、と言われています」と説明され、何も聞けなかった。一方で近畿大学の研究者にも取材を申し込んだのだが、「農水省でも同じことをやっているので……」と言われ、受けてもらえなかった。農水省の研究者を取材すると、丁寧に解説してくれた。

     おそらくその翌年、マウスのES細胞(胚性幹細胞)を研究している研究者を取材したとき、彼は筆者に「私たちは一般の人たちに説明する気なんてないですからね」と言い放った。国内でのヒトのES細胞研究の解禁が議論され始めていたころである。

     批判しているわけではない。90年代の科学界では、一般社会に対する情報公開や説明責任について関心が低かったのだろう。ES細胞研究者については、その後態度を変えたことを確認している。いまではほとんどの研究機関が広報の体制を整えており、研究者たちもおおむね取材を受けてくれる。

     称賛しているわけではない。現在では科学技術が社会に受容されるために情報公開と説明責任が必要条件であることなど常識なのだ。だが、十分条件ではないことも確認しておく。


     林英一、古川勝久、山内マリコ、粥川準二、小田島恒志の各氏が交代で執筆、毎週水曜日に掲載します。

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