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余録

「外交辞令」を「相手が喜ぶような事を口先だけで言う」と説明するのは…

 「外交辞令」を「相手が喜ぶような事を口先だけで言う」と説明するのは新明解国語辞典だ。わざわざ「本心とはうらはらに」ともあるのは、役人(この場合は外交官)に厳しい語釈で有名な新明解だからか▲なるほど外交では厳しい姿勢の表明すら、柔らかで婉(えん)曲(きょく)な表現を用いる。一国の「重大な関心」の表明は強硬な措置の前ぶれで、「行動の自由」が要求されると実力行使もありうる。これら婉曲な言い回しは本心を隠すためではない▲逆に冷静な雰囲気を守りながら、誤解なく重大な警告を伝えあうための慣例的語法という(ニコルソン著「外交」)。だが今日の世界には、外交の駆け引きに相手への毒々しい罵言(ばげん)や核戦争による脅しなどを平気で用いる人々がいる▲世界をまたも驚かせたトランプ米大統領による米朝首脳会談中止の発表だった。その理由に北朝鮮側がこの間示した「怒りとあからさまな敵意」を挙げたのは、直接には外務次官のペンス米副大統領への口汚い罵言を指してのことか▲思えば、どぎつい言葉の強硬姿勢で相手を譲歩させる駆け引きを“お家芸”としてきた北である。中止発表は「非核化」をめぐる米朝の隔たりの大きさをうかがわせるが、北の芸風が意思疎通のパイプをつまらせた一面もあったろう▲罵言や脅しの外交芸といえばもう一方の主役のトランプ氏だが、金正恩(キムジョンウン)委員長への書簡ではやんわり心変わりを待つと伝えた。会談の仕切り直しには、まず互いの「本心」を正確に伝える言葉が欠かせまい。

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