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エッセー集

田尻久子さん新刊『猫はしっぽでしゃべる』

 <日曜カルチャー>

     表紙の絵は「しーちゃん」こと「しらたま」であろう。新刊『猫はしっぽでしゃべる』(ナナロク社、1512円)の著者、田尻久子さんが経営する橙(だいだい)書店(熊本市)の白いオス猫だ。休憩中の私(米本)のふくらはぎにドンと当たってきた。「ここは書店ですけど、ワタシもいますからねー」というアピールである。

     著者はしらたまを含む何匹かの猫と暮らしている。藤田嗣治(つぐはる)そっくりの「フジタ」は短いしっぽを振る。猫はしっぽでしゃべる。<人間にも、しっぽがあればいいのにとたまに思う。しっぽでしゃべることが出来れば、もしかしたら、言葉を使うより意思の疎通が楽かもしれない>

     エッセー18本を収録。<小さくて不便>で<自習室>のような書店の日々を独り言のような自在な筆致でつづる。タイトルが猫であるように筆者が気にするのはそこにある日常である。非日常の出来事として熊本地震が起きた。店は移転を余儀なくされる。移転作業が始まる。

     <大事なものはなるべく持っていくつもりだったが、持っていけないものもある><大切なものは、なんでも持ってこようと思っていた。でも一番大切なのは、ここに集ってきてくれる人たちなのだと、気が付いた><もうすぐ、お正月には、ただいまと帰ってくる人たちがいる>

     読書家であり書評家でもある著者の初エッセー集。折々の本の感想が縦糸のように18本をつなぐ。戦前から戦後にかけての熊本を書いた『現車(うつつぐるま)』(福島次郎)、戦争の影の中での魂の一瞬の邂逅(かいこう)『すべての見えない光』(アンソニー・ドーア)など、書物に描かれた光景と橙書店の現実とが重なって見えるのが面白い。伊藤比呂美、川内倫子、坂口恭平、渡辺京二各氏による書き下ろしエッセーが挟み込み小冊子としてついている。【米本浩二】

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