メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

アートの扉

岡村桂三郎 百眼の魚18-1 異界へと誘う存在感

 頭部が見えない巨大な魚が漆黒の海を悠然と泳ぐ。こちらを見つめるのは体に付いた多数のまなこ。堂々とした姿態、神秘的なまなざしに世外の境地へ誘われる。

     日本画というと色彩が美しい花鳥画や風景画が思い浮かぶ。だが、画材は同じでも岡村桂三郎さん(60)の絵画はそうした先入観をやすやすと突き抜ける。まずサイズが大きい。高さ3・5メートル、横1・2メートルのパネルを複数枚つなぎ、屏風(びょうぶ)状に仕立てるのが今の基本。本展はこれまで約10年間に制作した27点が曲折して立体感を見せながら壁のようにそそり立つ。今年完成した本作は全長12メートルあり、迫力満点だ。

     手法も独特。板の表面を焼き、膠(にかわ)で定着させた岩絵の具を削って形象を浮かび上がらせる。美術館では禁物だが、「本当は作品を触ってもらいたい。絵はイメージでなく物質だと意識してほしいから」と岡村さんは言う。

     ほの白く、ざらついた絵肌で表現するモチーフも風変わり。魚だけでなく象や鳥、人間の顔まで「生命感」の象徴と考えるウロコで覆われている。ありふれた画題の竜も、なじみがある造形と打って変わり、まるで岩山のよう。土俗的なパワーを感じさせる、見たことがない姿だ。

     原点は「どうして人間は絵を描くのか」という芸術の本質に関わる問い。「(先史時代の)ラスコーやアルタミラの洞窟壁画が示すように人類は誕生間もないころから絵を描いてきた。なぜだろうと考え続けている」。見る者を圧倒する大きさも重厚感も特異な形態も多分、「絵の本質」をつかみ取ろうとする作家が到達した必然なのだ。【永田晶子】


     ◆プロフィル

    おかむら・けいざぶろう

     1958年、東京生まれ。画家、多摩美大教授。東京芸大大学院後期博士課程満期退学。芸術選奨文部科学大臣新人賞(2004年)、東山魁夷記念日経日本画大賞(08年)など受賞多数。


     ◆インフォメーション

    岡村桂三郎展--異境へ

     神奈川県平塚市西八幡の平塚市美術館(0463・35・2111)で6月24日まで。「21世紀の美術 タグチ・アートコレクション展」も開催中(同月17日まで)。月曜休館。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 殺人 「闇ウェブ」専門家刺され死亡 福岡繁華街、男出頭
    2. サッカー日本代表 不安定な川島 西野監督も苦言
    3. 質問なるほドリ 闇ウェブって何なの? 通信内容を暗号化 発信者の特定困難=回答・岡礼子
    4. 福岡男性刺殺 ネット書き込みで恨み 出頭の42歳男逮捕
    5. 福岡男性刺殺 容疑者か ネットに「自首し俺の責任取る」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]