メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

メディア時評

憲法より優位の安保条約=江上能義・早稲田大名誉教授

 戦後の沖縄にとって初めての憲法記念日は、1965年5月3日だった。米国統治下にありながら、自らの手で獲得するとして立法院の決議で法定祝祭日に指定されたのである。72年に本土復帰し、沖縄の人々は「これで沖縄も憲法に守られる」と思った。だが現実は違った。復帰して46年にもなるのに、沖縄はいま「憲法番外地」と揶揄(やゆ)されている。

     日本国憲法は前文で「平和のうちに生存する権利」をうたっている。だが復帰後も米軍基地が集中する沖縄では、米軍機による事故や墜落の恐怖と隣り合わせの日常生活が続き、平和的生存権の侵害を受けている。保護者らが署名運動をして米軍機の学校や保育園の上空飛行禁止を求めても、国は日米地位協定を理由に米軍への要請すら後ろ向きだ(毎日新聞5月3日朝刊)。

     憲法と条約とでは通常、憲法が優位に立つが、わが国の現実においては、日米安保条約や日米地位協定が日本国憲法より優位に立っている。そのために、沖縄では米軍が最優先されて、県民が憲法に定められている平和的生存権や基本的人権の順守を求めても、いつも政府や裁判所から門前払いをされるのである。「日米不平等の源流」と指摘される日米地位協定の締結から半世紀以上になるのに、一向にその差別的内容が改定されない。この地位協定の改定になぜ日米両政府が着手しないのか、メディアはその理由や背景についてもっと追及してほしい。併せて日本国憲法を超越した米軍による日本支配の総本山である日米合同委員会の実態を解明してほしい。

     安倍政権は国民の意思よりも、自衛隊の世界展開など米国の意向に即して憲法改正を急いでいるように見える。日米安保条約はその前文に、両国が「民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し」と記している。政府は憲法改正に着手する前に、国の根幹に関わるこの日米安保条約と日本国憲法との関係を、沖縄を含めた主権者である国民に対し、納得できるよう説明する責任と義務がある。(西部本社発行紙面を基に論評)

    関連記事

    コメント

    投稿について

    読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

    ※ 本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して毎日新聞社は一切の責任を負いません。また、投稿は利用規約に同意したものとみなします。

    利用規約

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 殺人 「闇ウェブ」専門家刺され死亡 福岡繁華街、男出頭
    2. サッカー日本代表 不安定な川島 西野監督も苦言
    3. 質問なるほドリ 闇ウェブって何なの? 通信内容を暗号化 発信者の特定困難=回答・岡礼子
    4. 福岡男性刺殺 ネット書き込みで恨み 出頭の42歳男逮捕
    5. 福岡男性刺殺 容疑者か ネットに「自首し俺の責任取る」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]