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教育改革シンポジウム

第10回高大接続教育改革シンポ 「主体性」はどう測られる?

シンポジウムには多くの高校、大学関係者が詰め掛けた=5月8日、東京都千代田区の毎日ホール

 2020年度の大学入試改革では、新テストへの記述式導入や英語の「4技能」評価に議論が集まる。一方で注目すべきなのが「主体性」の評価だ。高校の調査書に記される内容が増えるなど、生徒の意欲や活動が詳しく見られるようになる。入試はどう変わるのか。

     現行の大学入試センター試験に代わり、2021年1月から「大学入学共通テスト」(新テスト)が実施される。国語と数学に記述式問題が加わり、英語では「聞く・読む・話す・書く」の4技能を評価するために民間試験が使われるなど大きな変更が予定される。

     これらは「高大接続改革」と呼ばれる教育改革の一環だ。大学教育、高等教育、そして入試を一体的に変えることで、日本の教育を時代に合わせて、「学力の3要素をバランス良く育む」ものにすることを目指している。

     学力の3要素とは、(1)知識・技能(2)思考力・判断力・表現力(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度-のこと。これまでの入試は(1)の知識・技能の評価に偏っていたというのが文部科学省の見解だ。新テストへの記述式問題の導入は、(2)の思考力・判断力・表現力の比重を高めたいという意向の表れといえる。

     三つ目の要素である「主体性」の評価は各大学が個別に担う。調査書などの書類が用いられるが、生徒の多様な学習や活動の成果を適切に評価できるよう、文科省は調査書の「見直し」を決めている。課外活動や保有資格、表彰歴などを書き込む欄を拡充し、より具体的な内容の記載を求めている。また、これまでA4用紙1枚と決まっていた枚数制限も撤廃される。

     ただ、高校の現場などからは戸惑いの声も上がる。駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社が5月8日に共催した第10回「高大接続・教育改革シンポジウム」では、この「主体性」評価のあり方をテーマに、識者らが意見を交わした。

     文科省大学振興課の山田泰造・大学入試室長が基調講演として、改革全体の流れを説明した後、関西学院大でアドミッションオフィサー(※)を務める尾木義久・同大学長特命が登壇。特別講演として、生徒自身がスマホやパソコンなどを用いて、高校3年間のさまざまな活動を電子データとして蓄積していくためのシステム「JAPAN e-ポートフォリオ」の詳細を紹介した。

     同ポートフォリオはICT(情報通信技術)を使った、大学入試に使える「主体性」評価の仕組みを目指し、昨年10月に開設。文科省の委託事業として、関西学院大をはじめ8大学が参加して行っている調査研究の成果だ。21年入試に向けて高1生で活用が始まっており、今年は高3生を対象に実証試験が行われる。

     ポートフォリオに記録する内容は、日々の授業の探究活動、生徒会や部活などの校内活動、学校以外の活動や保有資格など多岐にわたる。活動の内容に加え、折々の“気づき”なども併せて記録していく。生徒の高校3年間の成長プロセスを見て取れる、いわば“電子版の調査書”だ。

     まだ実証段階とはいえ、来春入試では国公立大20校、私立大62校、短大5校が、何らかの形でポートフォリオのデータを活用する予定だ。近い将来、全ての受験生がこうした形で高校時代の活動の詳しい中身を大学から求められるようになるのは間違いないだろう。

     また、同じく特別講演として、文科省の「高大接続システム改革会議」委員を務めた順天中学・高等学校の長塚篤夫校長が、「学力の3要素」をバランス良く評価することで入試はどう変わっていくかを説明した。現在の入試は一般、AO、推薦の三つに大きく分かれているが、それらが次第に一つの形に近づいていくという。全ての入試で「3要素」を問うようになるので、違いは“どの要素に高い比重を置くか”だけになるためだ。

     入試で「主体性」が重要になると、各教科の点数の合計だけでは合否が決まらない。つまり大学は、自らの教育方針に合った生徒を独自の基準で選ぶようになる。それが各大学が定めるアドミッション・ポリシーになる。受験生にとっては、これまで手の届かなかった大学でも、その大学が求める資質や能力を示すことで合格を狙えるともいえる。

    落とす目的の入試を入れるためのものに

     続いて、前出の3氏に駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長が加わり、大学通信の安田賢治・常務取締役をコーディネーターとしてパネルディスカッションが行われた。注目されたのは、入試が点数に基づいた“公平性”を重視したものから、大学と受験生の“マッチング”を重視したものに変わっていくという点。山田氏は「今の入試では欲しい人が選べていないと思っている大学関係者は多い。どういう人が欲しいか、そのための手段としての入試は適切か、などを考え直すチャンスだ」と強調。石原氏は「今の入試は受験生を効率的に“落とす”ことを目的とする、人口増加時代に合った制度。これからは、その大学に合った受験生を選んで“入れる”ためのものになる」と話した。

     また、「主体性」評価が一般入試にどう取り入れられるのかという点を安田氏が質問。尾木氏は「出願資格とする、得点化する、合否判定の参考にするという三つの使われ方が考えられるが、どう使うかは各大学で異なる。じっくりと『主体性』を評価するには、合否のボーダーライン上の受験生を特に重点的に見る方法が考えられる」と答えた。

     ボランティア活動や留学経験などが「主体性」として評価されるようになっても、そうした活動に積極的ではない生徒は当然いる。「『主体性』評価によって勉強への関心が強い生徒は不利になるのでは」という安田氏の指摘に対し、尾木氏は「国立大など研究者志望の学生を欲している大学もある。『主体性』として“学びに向かう力”を評価するので、逆に有利になる」という見方を示した。

     そもそも「主体性」という言葉の意味が広いため、とりわけ一般入試でどこまで評価が可能なのか、という疑問を多くの人が抱いているだろう。

     「各大学が新しい入試方式を良いと認識するかどうかにかかっている」(長塚氏)

     「初めは少しずつでも、ある時に流れが変わるのは間違いなく、(これからの)生徒は備えておく必要がある」(石原氏)

     いずれにしても、各大学が入試で“さまざまな力”にスポットライトを当てようとしている。生徒が自らの力を自由に伸ばせるような改革にできるかどうかが問われている。【大学通信・松平信恭】

    ※入試でその大学が欲しいと考える学生を選抜するための業務を担う専門職員

    ●週刊「サンデー毎日」6月10日号より転載

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