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身じまい自習室

/4 5分間の「入棺体験」 「最期はひとり」を実感 /東京

2人ペアになって行う入棺体験。フタの重さがリアルだった

 終活協議会(東京・巣鴨)の遠藤ひできさん(50)から「入棺体験」に誘われたとき、まさか本当に入るとは思っていなかった。各地の終活イベントではよくある出し物だし、閉所恐怖症だし。でも、実際会場に行って遠藤さんの説明を聞いて、やってみる気になった。葬儀っぽい演出はない。段ボール製ではない、普通の棺おけでやるというのだ。

 何より、いきなり<あなたは今、あの世にいます>という想定から入るのである。その後に設問がまず三つ。

 (1)あなたが残してきた人たちは、今なにをしていますか?

 (2)あなたの残してきた身体は、今どこにありますか?

 (3)あなたの葬儀はどんな葬儀でしたか?

 質問用紙の余白に、自分なりの答えを書いていく。ワーク後の話し合いはしないという。自分の答えは自分しか知らない。だから、正直に考え、書いていける。(1)~(3)は自分は墓や葬儀をどうしてほしいか、そしてその要望が本当に実現するか、配偶者ら身近な人との関係性の話だろう。

 そのあと、入棺となった。時間は5分。短いと考えがまとまらない、長いと寝てしまうかららしい。

 コワごわ箱の中に横たわり、白い化繊の布団をあごの下まで引き上げると、重たげなフタがゆっくり閉じられた。真っ暗……いや、のぞき窓から薄く光がさしている。狭いぞ。寒いぞ。外の声がぼんやり聞こえる。みんなが外で悪口を言ってるような……。

 自分のカラダのサイズを感じる。あれっ、そのカラダが消えて、私には「意識」しかなくなる。ひとりだなあ。死ぬというのは「ひとりになること」かなあ。長いなあ、まだかなあ。早く開けてほしいなあ……。

 コンコンとフタがたたかれ、光が大量に入ってきた。ああ、この世に戻ってきた!

 体験後、号泣した人もいれば、大笑いした人もいたという。某芸能人は「胃の動く音がした」と言ったらしい。感想は人それぞれでいい。

 全員が体験したあと、次の三つの設問はさらに具体的な問いかけになる。ネタバレになるから書かないが、(4)~(6)ではまさに死に直面した瞬間、心に浮かぶよしなしごとを問うものであった。棺おけの暗やみの中で5分。ある程度緊張し、心が浄化された状態で、人知れず書くことは本心なのである。

 「このワークを通して、葬儀社や相談員の方に死の意味を理解してもらいたいのです」と遠藤さん。私は……実は気分が晴れた。自分はこんなことを考えているのか。発見もあった。

 でも、もうこりごり。入るのは「最後の一度」でいい。【滝野隆浩・58歳】=隔週金曜日掲載

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