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社説

6・12会談へ 米朝の綱引き 迅速な非核化は譲れない

 米朝首脳会談が12日にシンガポールで行われることが固まった。朝鮮戦争(1950~53年)後、65年もの長きにわたって敵対してきた両国の首脳が、初めて向き合って語り合う意義は大きい。

     焦点は北朝鮮の非核化だが、首脳会談は東アジアに残る冷戦構造や韓国・北朝鮮の南北分断状況にも大きな影響を及ぼす。北朝鮮の核・ミサイルの脅威にさらされてきた日本にすれば、安全保障にかかわる重大な会談になるはずだ。

     トランプ米大統領はぜひとも歴史的な会談を成功に導いてほしい。

     ただ、北朝鮮の非核化に関して不安が強まっているのも確かだ。米側はこれまで迅速な非核化に意欲を示し、目標達成へ明るい見通しを語り続けたが、トランプ氏は1日、一度の首脳会談で合意文に署名することはないと記者団に語り、問題解決には複数回の首脳会談が必要になるとの認識を示した。

    長期戦への転換は危険

     この日トランプ氏は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の親書を携えて訪米した金英哲党副委員長と会談した。直後の「トーンダウン」は北朝鮮への配慮かもしれない。首脳会談で見るべき成果がなければトランプ氏への打撃になるので、過剰な期待を抑えたかったのかもしれない。

     だが、1週間前(5月24日)、いったんは首脳会談中止を発表した時のトランプ氏とは明らかに違って見える。その時のトランプ氏は金委員長への書簡で、北朝鮮は平和と繁栄への貴重な機会を失ったと述べ、米国の核戦力を強調しつつ北朝鮮に新たな制裁を科す構えも表明した。

     ところが、1日は北朝鮮への新たな制裁を否定し、多用してきた「最大限の圧力」という言葉も使わないと明言した。米朝の折衝が継続中だからというのだが、唐突さがぬぐえない発言である。

     非核化を巡る北朝鮮との折衝は、米側が言うほど順調には進んでいないのだろう。トランプ氏は金副委員長との会談などから迅速な非核化の実現に自信をなくし、北朝鮮が主張する「段階的な非核化」もやむなしと長期戦の構えに転換したのか。そうでないことを祈りたい。

     非核化には地道な作業も必要だから1日や1週間では終わるまい。だが、米国が主唱し国際社会が支持してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」は、現存の核兵器や核施設を含めて北朝鮮の核の脅威を解消するのが目的だ。

     会談の10日ほど前に、この目的がぶれるのは危険だ。仮に、長年にわたる段階的な核廃棄を許容すれば、段階ごとに履行をめぐるトラブルが生じかねず、脅威の解消は難しくなる。特に、相手は北朝鮮なのだ。

     米国は忘れていまい。94年に北朝鮮の核開発を凍結する米朝枠組み合意が結ばれたが、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否、あるいは査察要員を追放して、ひそかに核開発を進めてきた。

     何より2005年9月の6カ国協議を思い出すべきだ。北朝鮮は他の5カ国とともに核放棄の共同声明を発表したが、合意事項を守らず翌06年には初の核実験を行った。

    厳密な検証が不可欠だ

     過去の米政権のような失敗はしないとトランプ氏は豪語する。ならば、北朝鮮ペースの核廃棄ではらちが明かないと考えるべきだ。

     トランプ氏が敬愛するという故レーガン米大統領は、ロシアの格言とされる「信頼せよ。しかし検証せよ」という言葉を好んだ。

     87年にソ連と中距離核戦力(INF)全廃条約を結んだ際もこの言葉を使った。調印式典でソ連のゴルバチョフ共産党書記長が「いつもそう言うね」とからかい、レーガンは「(この言葉が)好きなんだ」と答えている(レーガン「自伝」より)。

     米ソが一定の射程の地上発射ミサイルを撤去する同条約は画期的なものだった。両国はレーガンの言葉通り互いに厳密な査察を続け、欧州を中心に核の脅威を大幅に減らした。近年、米露が条約違反だと言い合っているのは残念だが、「厳密な検証」は北朝鮮との非核化交渉においてこそ不可欠な要素だ。

     北朝鮮に対する体制保証、経済支援の問題もある。朝鮮戦争を正式に終わらせる協議も大切だろう。だが、それらの協議は「核兵器のない北朝鮮」が大前提となるべきで、北朝鮮の非核化を実現するのが先決だ。そこを間違えれば、地域の平和と安定への青写真もゆがんでしまう。

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