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選択広げ、転勤での離職防ぐ

1カ月のうち2週間、東京都内で働く日出美紗子さん=東京都墨田区で

 <くらしナビ ライフスタイル>

     共働き世帯にとって、配偶者の転勤は悩ましい問題だ。労働市場や社会の変化により、「別居か離職か」という二者択一ではない選択肢が生まれている。現状と課題を探った。

     ●出産間近に控え

     「広島に転勤になりました」--。昨年3月、ウエディングプランナーの日出(ひので)美紗子さん(31)は、スマートフォンに届いたメッセージに目を疑った。送り主は人材会社勤務の夫(31)。第1子となる長男(1)の出産を3日後に控え、病院から帰る途中だった。オーダーメード挙式を手がける「クレイジー」(東京都墨田区)に入社して約1年半。会社近くのマンションに住み、出産後は早めに仕事に復帰するつもりだった。

     夫は単身赴任を覚悟した。一方、日出さんには家族が離れて暮らすことは考えられなかった。出産後の2カ月を埼玉県の実家で過ごし、一足先に赴任した夫を追うように、昨年5月、広島へ引っ越した。

     社員からの提案がきっかけで、同社は「子連れ出社」を認めている。周囲が柔軟な働き方をしているのを間近で見ていた。「広島をベースに、行ったり来たりできたらいいな」。ウエディングプランナーとして結婚式の台本を作った経験に加え、社内イベントで司会を任されることも多かった。働くうえでの「強み」を作ろうと、育児休業中に結婚式の司会の腕を磨いた。年が明け、こう上司に切り出した。「東京に行くのは1カ月のうち2週間。残りは広島で主婦をしたい」。職種にはこだわらなかった。会社側も提案を否定しなかった。2週間の出社で、できる勤務は何か。話し合いを重ねた。

     「(仕事を)辞めないことに固執しているのではないか」「広島で働く選択肢があるかもしれない」。それでも、「退職」の2文字が頭をよぎったことがある。結局、3カ月の試行期間を経て復帰が正式に決まった。課題だった情報共有は3人の小規模チームを作って対応した。現在、プランナーとしての担当件数を減らし、司会を兼務する。

     首都圏の出身。初めての地方暮らしで見えてきたものがある。地方出身のカップルが地元を懐かしむ気持ち、遠く離れた土地に子どもを送り出す親の思い。顧客の考えや背景など、ずっと東京にいたら分からなかったことに気づいた。それは、結婚式で温かさを表現したい時のアイデアに生きる。「子どもが成長すればまた違う働き方になるかもしれないけれど、今はベストです」と日出さんは言う。

     ●社会的ロスになる

     独立行政法人「労働政策研究・研修機構」(東京都練馬区)が従業員300人以上の企業1万社(有効回答1852社)を対象に実施した調査(2016年)では、配偶者の転勤を理由に退職した正社員がいると回答した企業は33・8%に上った。配偶者の転勤中に休職を認める制度がある割合は3・9%。制度の導入時期は10年代が70・8%と大半を占めた。慶応大経済学部の太田聡一教授(労働経済学)は「転勤が社会に与えるコストは昔より大きくなっている」と指摘する。太田教授は昨年、リクルートワークス研究所の調査(16年)を基に、過去5年間に夫の転勤で会社を辞めた妻の就業状況について調べた。約半数が仕事を持たず、働いていても非正規雇用が多かった。

     世帯の主な働き手である男性の正社員は配置転換をいとわず、いつでもどこでも働く。その代わりに会社は雇用を保障する--。こうした従来のモデルは、女性の高学歴化による労働市場への参入が進んだことに伴い、変わりつつある。太田教授は「家庭にとっては転勤は収入リスク。有能な人材が社会から失われる点から見れば、社会的なロスになる」と話す。

     たとえば、営業地域が限られる地方銀行。家庭の事情でエリア外に転居しなければならない場合は退職を余儀なくされる。こうしたケースに対応しようと全国の地銀64行が連携し、転居先の地銀に就職先を紹介し合う「地銀人材バンク」を15年4月から始めた。結婚や配偶者の転勤、家族の介護などを理由にやむなく辞めなければならない人たちが対象だ。今年4月末までに194件の申し込みがあり、137件の就職が決まった。昨年7月からはシニアの再雇用にも対象を広げた。

     ●テレワークを活用

     ただし、制度があっても必ずしも利用できるわけではない。代わりに新幹線やテレワークを使い、自分らしい働き方を模索している人もいる。

     夫(41)の転勤先の北関東に住む女性(37)は、東京都内の人材会社に新幹線で通っている。「自分で無理だと決めつけていたけれど、辞めなくて良かった」と振り返る。

     都内で育児休業中だった11年、夫の転勤が決まった。夫のキャリアアップを考えれば、転勤は重要なステップだ。応援したいと思う半面、「これまで考えていた人生設計がゼロになる」と戸惑った。

     勤務先には、配偶者の転居先近くに異動できる制度はある。しかし、近くの支店に適切なポストがなかった。育児休業から復帰するにあたり、都内の本社勤務を打診された。やってみて無理なら考えよう。そう考え、不安はあったが再び働き始めた。子どもを預けた駅前の保育園には、同じように新幹線で通勤する女性が数人。実際やってみると、思ったより負担感はない。週に1日、自宅でテレワークを活用している。

     ●不安より行動を

     「私はたまたま仕事を継続できましたが、やむなく退職した人もいます」。夫の転勤先に自分のポジションがなかったり、子どもの新しい預け先が見つからなかったり……。子育て中の女性の再就職支援を仕事で手がけた際、自分の意思とは関係なく辞めざるを得なかった多くの転勤族の妻と出会った。「期間限定で会社にいるのは迷惑ではないか」「頼れる人がいない中で働き始めていいのか」。再就職に向けて踏み出すにあたり、不安は尽きない。しかし、女性は「インターンシップや週末限定の派遣など、できることから動き続けている人は再スタートを切っています」と言う。

     テレワークの試行を会社が始めた時、女性は自ら手を挙げた。「テレワークは万能ではありませんが、選択肢があればキャリアを続けやすい。明日から突然『やりたい』と言っても難しいので、事前に準備しておけば周囲も受け入れやすいのではないでしょうか」【椋田佳代】

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