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余録

無愛想で突き放したような口のきき方を…

 無愛想(ぶあいそう)で突き放したような口のきき方を「切(き)り口(こう)上(じょう)」という。こう言うと、今ならおのずと一人の大臣の顔が浮かんでこよう。最近、質問一つに答えるのも、何かけんか腰でけんのんな麻生太郎(あそう・たろう)財務相である▲この切り口上、もともとは芝居の言葉で、「切り」は終演のこと、「口上」は舞台上のあいさつである。今では考えられないが、昔は芝居の途中でも突然拍(ひょう)子木(しぎ)が鳴って終演の口上が述べられることがあった。これが切り口上である▲「今日(こんにち)はこれ切(ぎ)り」。理由は日没やら、時間が押したためやらさまざまだが、有無を言わせない打ち切りである。さすがに昔も不満を言いたい客はいただろうが、おとなしく退場させるためわざと愛想のない型通りの文句を用いたのだ▲「私の進退は考えていない」。麻生財務相のこの切り口上が財務省の決裁文書改ざんの幕引きとなるのか。当時の理財局長の事実上の指示を認めた調査結果と、職員の処分とともに自身の閣僚給与自主返納を公表した記者会見だった▲だが、そもそもどうしてそんな文書の改ざんや廃棄がなされたのか。森友問題とは何だったのか。事の核心はなお答えのないままである。芝居が佳(か)境(きょう)に入ったところで終演宣言を聞かされた昔の観客の気持ちが分かろうというものだ▲「これっきり」という言葉のルーツとも見られる切り口上だが、そう言われておとなしく人が席を立つと思ったら大間違いだ。昔の芝居小屋の座元と違って、現代の政府には「政治責任」というものがある。

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