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社説を読み解く

森友・加計問題 常態化した「ウソの連鎖」=論説副委員長・人羅格

記者会見に臨む麻生太郎財務相=財務省で2018年6月4日、手塚耕一郎撮影

読売・議論に「辟易してしまう」 他紙主張と際立つ違い

 「ウソは他人を巻き込む」。加計学園の獣医学部新設問題をめぐり、公文書の国会への提出などに応じた愛媛県の中村時広知事の言葉である。

     公文書管理と情報公開という車の両輪が二つとも政府によってないがしろにされた。ウソが政権を巻き込んで広がり、政治の土台がむしばまれている。

     1年以上にわたり政治を揺るがした「森友・加計」問題が大きな節目を迎えた。

     森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題で、財務省は4日、調査報告書を公表した。

     翌5日の社説はこの問題に対する総括的な論評の場となった。ここで毎日新聞が主眼を置いたのは麻生太郎財務相続投への批判だ。

     国会に提出される文書を中央官庁が改ざんしたり、廃棄したりする前代未聞の不祥事である。にもかかわらず安倍晋三首相が麻生氏を続投させたのは「政権の致命傷にならないと高をくくっているのだろう」と指摘した。

     政治家が誰も責任を取らないようでは、ウソが常態化する。「政治道徳の堕落」を防ぐためにも麻生氏辞任は不可欠だと強調した。

           ◇

     他紙は朝日新聞が麻生氏の「即刻辞任」を求め、日経新聞は「時機をみて決断することを求めたい」と引責は必要とした。

     読売新聞は麻生氏が留任するのなら「組織風土の刷新」に取り組むよう促した。産経新聞は麻生氏を続投させる首相に「明確な指示を開示してほしい」と注文をつけた。

     改ざんを生んだ背景と構造についても各紙は論じた。首相は昨年2月17日、「森友」疑惑について「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言い切った。佐川宣寿前理財局長が国会で「記録はない」とウソの答弁をしたのはその1週間後だった。

     財務省の報告書は首相答弁を契機に文書廃棄が進んだことを認めた。毎日は改ざんや廃棄の「核心」は首相の妻昭恵氏の関与を隠そうとしたことだと分析し、読売も「首相答弁への配慮があったと見られても仕方がない」と指摘した。

           ◇

     一方で加計学園の問題は、新たな疑惑が浮かんでいる。

     国家戦略特区による獣医学部の設置認可より2年以上前の2015年2月25日、首相と加計学園の加計孝太郎理事長が面会し、首相が計画への賛意を伝えていたと愛媛県の文書に記されていた。

     この内容は、計画を初めて知ったのは「17年1月20日」だという首相の説明と真っ向から食い違う。

     その後、学園側は「面会の事実はなかった。誤った情報を愛媛県に説明していた」とのコメントを発表した。その通りだとすれば、加計学園は首相のお墨付きをでっちあげていたことになる。

     当の首相は学園に抗議せず、先月28日の衆参予算委員会でも学園への論評を避けた。この不自然さに翌29日毎日は「本来なら怒ってしかるべきだろう」、朝日は「学園の説明は額面通り受けとれない」と疑問を投げかけた。

     愛媛県の文書が面会を記した15年2月を境に、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)の下で、学園や自治体との協議は活発化した。加計問題に残された大きな疑問である。

     そうした中で、他紙との違いが際立つのが読売の論調である。

     首相の面会が焦点だった予算委員会審議を受けた5月29日社説は「繰り返しの論議に辟易(へきえき)する」との見出しだった。「明確な根拠も示さず、疑惑をあげつらう野党と、粗い対応で混乱を招いた安倍首相の双方に責任があろう」と双方を同列に並べ、国会での疑惑追及に「同じ議論の繰り返しには辟易してしまう」と嫌悪感すら示した。

     読売は愛媛県が文書を国会に出した際も、政府と対立構図に見えるとして「違和感を拭えない」と評し「国会の混乱に幕を引く時だ」(5月24日)と主張した。

     普段は安倍政権に親和的な論調の産経が、同23日社説で加計氏の国会招致を求めたのと対照的である。財務省調査についての6月5日社説も、読売だけは上下2本掲載したうちの下で扱った。

           ◇

     「モリ・カケ」にエネルギーが割かれ、政策論争が後手に回る懸念は各紙とも共有している。だが、疑惑が長引いているのは、新事実が発覚し続けているためだ。

     両問題には共通点が多い。いずれも首相か、首相の妻と親しい学校法人が土地売却や認可などをめぐり厚遇され、行政がゆがめられたのではないかという疑惑だ。

     解明を急ぐためにも加計学園の関係者や、森友学園による小学校の名誉校長だった昭恵氏による説明が欠かせないと考える方が常識的ではないか。

     日経や産経は、国会に特別委員会を置き疑惑を解明することも検討すべきだと指摘した。政策論争と並行させるための提案だろう。

     「森友・加計」問題をめぐり「忖度(そんたく)」と称されるような官僚たちの行動の背景については、官邸へのいびつな権力集中に伴う弊害が指摘されている。

     首相在任中、公文書管理の法制化を進めた福田康夫元首相は最近の記者会見で「改ざんなんてことがあり得るのかと思った」と驚きを隠さずにいる。裏返せば、官僚たちをそこまで走らせる素地が安倍政権にあるということだ。

     内閣人事局が発足し、幹部人事は官邸に一元管理された。とりわけ安倍政権下で財務省は弱体化し、組織防衛を迫られていた。

     だからこそ、一連の事態は「官僚の不祥事」と片付けられない。「官僚のみに責任を押しつけるのではなく、内閣の政治責任を明確にすべきだ」(毎日、5日)と主張するゆえんである。

     ウソの常態化をどう食い止めていくのか。とりわけ、今後問われるのは、行政府から欺かれ続けた国会の力量である。


    「森友」調査に対する各社5日社説の見出し

    ・毎日=居座った財務相の不実さ

    ・朝日=社会のモラルを掘り崩す

    ・読売=再発防止で信頼回復を急げ

    ・日経=地に落ちた財務省の信頼は回復できるか

    ・産経=財務省も首相も猛省せよ

    加計「新文書」や国会審議をめぐる各社社説の見出し

    ・毎日=首相が怒らない不可解さ

    ・朝日=政治の惨状 首相に責任

    ・読売=繰り返しの論議に辟易する

    ・日経=特別委での事実解明も一案だ

    ・産経=重要法案と分けて解明を

     ※産経は5月23日、他紙は同29日


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