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号外「はれのひ」社長 詐欺容疑で逮捕
毎日フォーラム・視点

経営改革プロデューサー/戦略広報アドバイザー 川部重臣

川部重臣氏

華道改革と地域創生 地域の文化振興から新産業の展開へ

 簡単に華道界が直面している状況を紹介してみたい。全国で2000を超えると言われている華道流派は、それぞれが家元を頂点に華道教室を展開、流派の花型と教本にそって技術を教え、成果に対して免状を与えるという、家元から華道教室まで整然としたピラミッド組織を運営。入門料や月謝・免許状費用などを組織的に徴収するビジネスモデルが流派の繁栄を支えてきた。

     そうした成功事例に現在何が起きているのか。(1)結婚に必要な女性の素養としての認識が希薄化(2)若い生徒たちを指導してきた華道教授の高齢化(3)住宅からいけばなを飾る床の間が消失(4)現代女性の興味と関心を捉える事象が多彩に登場(5)男女雇用均等法が企業の終業後の華道部活動を困難化(6)短期間で習得可能なフラワーデザインが流行--など「華道を学ぶ環境」が現代女性市場から見事に失われてしまっている。

     これらの状況が華道流派に不透明な経営状況を招いている。

     このような華道界の状況に対して若手華道家・上野雄次さんたちが危機感に駆られて立ち上がったのが「いけばな徹底闘論」という活動だ。未来にいけばなは必要か?と問い掛ける大胆なテーマを掲げて、9人がパネルディスカッションを行った。前回の徹底闘論では会場から積極的な発言をした私は、危機感を共有する上野さんに誘われて今回はパネリストとして登壇。メンバーは華道界のレジェンドと慕われる大物から次代を担う若手の家元や副家元、フラワーデザイン界の代表、そして元は流派に所属していた実力派の独立華道家に加えて、経営改革プロデューサーの私である。

     4時間あまりの談論風発の議論は論点が多く大いに盛り上がったが、結論には至らないまま終了。会場に華道専門紙「日本女性新聞」の編集長・西川治嘉さんがいらして、「昨夜の議論はとても意義深く面白かった。原稿を書いて欲しい」と連絡をいただいた。

     日本女性新聞は華道専門紙として大きな役割を果たしてきた。その紙面で「徹底闘論の議論から」と問題提起した課題は、(1)改革リーダーが不在。華道界を横断するリーダーシップは誰が取るのか(2)改革の推進組織がない。新しい時代が求めるいけばなの研究を始めて欲しい(3)改革には推進メディアが必要だ。日本女性新聞の改革と支援に期待したい(4)いけばな生存のためのマーケティングが必要だと提言した。紙面には紹介しなかったが課題は他にもある。以下に紹介すると、(5)改革のための活動予算がない。流派団体の事業として予算化できるか(6)論客が不在だ。理論家・評論家の議論が必要だ。そして「ブランディングが必要だ。新しい時代に求められる新しい華道の存在価値が確立されていない」と結論づけた。

     名著「華日記」で知られる華道界の論客・脚本家の早坂暁さんが日本女性新聞に連載中の人気コラム「へいせい華日記」でさっそく高い評価をいただいた。編集長からは、この提言を契機に紙上で大いに議論を展開して欲しいと、好意的なメッセージをいただき、愛知県豊田市の著名な華道家・かとうさとるさんからは、この提言は大いに価値があるのでぜひ出版して欲しいとまで褒めていただいた。

     このような日本女性新聞での評判が具体的な活動に展開した。華道界の次代を担う若手の副家元や華道家を中心に「日本いけばな懇話会」という組織が結成されていて、「このままではいけない」と意欲的なメンバーを100人近くも集めて活動の準備を始めていた。

     その懇話会のリーダーから「設立2回目の総会で基調講演をお願いしたい」と依頼され、前記の提言を骨子として「ゆでがえる現象」などのエピソードを交えて、時代の変化に対応できない組織は滅んでしまうと、華道改革の必要を提言した。既存の華道団体での改革行動が難しいと感じていただけに、この若々しい日本いけばな懇話会に期待して、その後も積極的に応援したが、結果としては組織を挙げての行動は実現できなかった。

     この間、華道界の停滞に対して、若手華道家の「花いけバトル」などの独自の活動が高校生大会にまで拡大してテレビや新聞で紹介され、「新いけばな主義」という次代のいけばなを目指した理念重視の素晴らしい公募展がスタートするという活動は見られたものの、華道界全体の取り組みが現在も見えないのが残念である。

     私の改革提言は日本女性新聞で高く評価されたものの、「いけばな外野席」という発言スタンスもあって、具体的な取り組みが始められることはなかった。

     そのような状況の中、私は思いがけない病を得て2年間休職、昨年5月から金沢に転居している。華道史の中で金沢は特別なまちで、有力な古流家元が明治維新の機に東京から金沢に拠点を移したり、若くて意欲的な華道人たちの研究会「石川県いけばな新進会」の先進的な活動が有名で、中川幸夫さんなど東京から著名な華道人が参集するなど、全国の華道界から注目されてきた。

     金沢に住んで知ったことだが、地元の北國新聞社が50年も前から華道振興に力を入れていて、先の石川県いけ花新進会の設立も、現在まで43回も開催されている流派横断の大規模華道展・北國花展も北國新聞社の主催である。

     改革には、「行動する推進組織とメディアが必要」という私の提言の重要な要因がこの金沢で実現できていることに加えて、知事が会長を務める石川県いけばな連盟の共感を得て、石川県の事業としてこの金沢から華道改革が始められないかと期待している。

     華道改革も県が主体となると視野が拡大する。農業振興で6次化という発想が注目されたが、華道を切り口に6次化の視点で捉えてみると、関連産業の振興や地方創生という大きな課題まで展開が見えてくる。

     たとえば新しい華道創造という視点から、1次産業化では、新花材の開発や産業化から新しい花卉農業の振興が見えてくる(昔は「野菜盛り・果物盛り」という分野もあった)。

     2次産業化では、新しい花器などの工芸やものづくりへの展開が可能であり、さらに新しい床の間=花を飾るスペースを持った住宅開発という大規模事業まで。

     3次産業化では、新しい時代の教養文化への関心喚起とともに、若い男性向けに「紳士の嗜み=新イケメン像」としての華道提言や、中高生の新しいカリキュラムとしての華道導入、新華道を標榜する活動の開始など。

     単に華道界の活性化にとどまらない、「新しい華道」をキーワードとした行政の大きな事業展開や地域創生の政策化が見えてくるのではないか。このような展開によって華道界は不透明な閉塞感を振り払い、地方創生の新分野の開拓に貢献できないか。

     石川県の支援のもと、北國新聞社と石川県いけばな新進会や石川県いけばな連盟を中心に、華道改革の行動開始に期待したい。

     かわべ・しげおみ 1943年生まれ。長い間CIプランナーとして墨田区の中小企業や墨田区役所の経営革新に携わり 中小企業大学校では10年にわたって、中小企業が時代変化に対応するための経営改革のCI講座を担当。また静岡県庁では時代の新しい行政ニーズに対して「戦略広報」という概念を提言。行政組織風土の改革に携わった。さらに中小企業庁のジャパンブランド推進事業では採択や理念の構築を担当。最近は縁あって華道界と出会い、華道界の閉塞感に対して改革の必要を華道専門紙「日本女性新聞」紙上で発言している。

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