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毎日フォーラム・特集

事業承継 後継者に悩む企業支援 中小企業庁

日本経済を支えてきた中小企業。金属加工工場の作業風景=大阪府東大阪市で(記事とは関係ありません)

25年にGDP22兆円消失のおそれ

 日本経済の裾野を支えている中小企業が大きな曲がり角に立たされている。喫緊の課題が経営者の事業承継問題だ。中小企業庁によると、現状をこのまま放置すると廃業する中小企業は後を絶たず、2025年までに15年比で約650万人の雇用が失われ、約22兆円のGDPが失われるおそれがあるという。そのような事態は我が国の経済力の衰退に直結するだけに有効な対策が求められている。同庁は切れ目のない事業承継支援を集中した施策に乗り出している。

     中小企業庁によると、今後10年間に平均引退年齢とされる70歳を超える中小企業・小規模事業の経営者は約245万人で、そのうち半数の127万人が後継者未定という。この経営者たちの127万社は日本の企業全体の3分の1に当たるため事態は深刻だ。同庁は「事業承継の解決なくして、地方経済の再生や持続的な発展はない」と説明している。

     特に地方の経営者の高齢化が進んでいる。60歳以上の経営者の割合を全国的に比較すると、最も高いのが秋田県で66.7%、次いで島根県62.8%、佐賀県60.9%、北海道60.3%、茨城県58.9%と続く。全国各地の産地でも、後継者不足による倒産や廃業が進んでいる。

     日本総研の調査によると、全国578の産地を対象に聞いたところ、西陣織や益子焼、川口鋳物など263の産地から回答があり、倒産、廃業の理由として「後継者不足」という回答が65.4%もあったという。

    「ものづくりのまち」で、町工場が次々と住宅に姿を変えている。左下は京急大森町駅=東京都大田区で2016年6月11日

    事業承継の補助金交付

     同庁は切れ目のない支援策として「税制による円滑な承継支援」「気付きの機会提供」、「マッチング支援」などを掲げている。

     税制の支援では、事業承継税制の要件を10年限定で拡充する。今年1月1日以降の贈与・相続が対象で、今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行うものが対象になる。贈与・相続の株式の上限を撤廃して納税猶予割合を100%に拡大し、複数の株主から複数の後継者への事業承継についても対象者を拡大するなどの措置を取った。また、M&A(企業買収)を通じた事業承継への支援策も新設した。近年増加している親族外承継を後押しするためにM&Aに係る登録免許税、不動産取得税を軽減する。

     気付きの機会提供では、事業者の身近にいる金融機関や税理士、会計士などの専門家が経営者に働きかける「プッシュ型事業承継診断」を年間5万件ほど実施し、休廃業リスク分析などのデータも活用して、集中的、効果的な働きかけを行う。

     マッチング支援では、年間1000~2000件の事業承継が実現できるように専門家の増員など、既存の「事業引継ぎ支援センター」の体制を強化するように支援する。こうした一連の支援のうえに、承継後のチャレンジ支援も行う。事業承継やM&Aを通じた事業引き継ぎの後に、経営革新や事業転換に取り組む中小企業に対して「事業承継補助金」を交付して設備投資などを支援する。

     中小企業庁はこれまでに、さまざまな施策を打ち出してきた。11年度からは後継者不足の中小企業の事業引継ぎを支援するため、中小企業のM&Aを行う事業引き継ぎ支援事業を進めてきており、16年度までに「事業引継ぎ支援センター」の全都道府県への展開を実現した。同センターは、相談を受けて事業引き継ぎの可否を判断し、相談案件を登録した金融機関などに引き継ぐ。そのうえで当事者同士などのマッチングを行っている。発足以来の相談件数は17年度までに2万5514件で、1478件の事業引き継ぎを実現した。

     さらに、昨年7月には、事業承継を契機に後継者がベンチャー型事業承継などの経営革新などに積極的にチャレンジしやすい環境を整備するため、17年度を初年度に今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とする「事業承継5カ年計画」を策定した。地域ごとに、それぞれの支援機関がつながる事業承継プラットフォームを立ち上げ、事業承継診断などによるプッシュ型の支援を行い、事業承継ニーズを掘り起こす経営者の「気付き」を提供する。そのほか、後継者が継ぎたくなるような環境の整備、後継者マッチング支援の強化、事業からの退出や事業統合などをしやすい環境の整備を実現させる政策を実施している。

     同庁は「今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず6割が後継者未定で、70代の経営者でも、事業承継に向けた準備を行っている経営者は半数にとどまるため」と説明している。

    都道府県単位の「事業承継ネットワーク」構築

    次世代の企業経営者らを対象に事業承継の説明会が開かれた=千葉市で2016年10月20日

     昨年度からは、事業承継に向けた準備を促すため、都道府県単位で商工会や商工会議所、金融機関などの身近な支援機関で構成する「事業承継ネットワーク」の構築にも力を入れている。事業承継診断などを通じたプッシュ型支援を実施する事業も進めている。昨年度は全国19の県で事業承継ネットワークの事務局を担う事業者を採択した。例えば岩手県では盛岡商工会議所が、愛知県では「あいち産業振興機構」が、愛媛県では「えひめ産業振興財団」が事務局を担う事業者に採択されている。将来的には全国協議会を組織して横への展開ができるように全国的な支援体制も作っていくという。

     事業承継の難しさから、休廃業・解散する中小企業はどれくらいあるのだろうか。東京商工リサーチが今年初めにまとめた17年「休廃業・解散企業」動向調査は、深刻な実態を浮き彫りにした。

     それによると、17年に休廃業・解散した全国の企業数は前年比4.8%減の2万8142件で、3年ぶりに前年を割り込んだ。しかし、企業倒産が好景気から年間で1万件を割り込む中、倒産件数の3倍以上の企業が休廃業・解散を選択していることになり、待ったなしの状況を改めて裏付けた形だ。

    後継者人材バンク事業 滋賀県で始まる

     一方、事業承継を促進させる関係団体などの独自の取り組みも始まっている。大津商工会議所内に開設された滋賀県の事業引継ぎ支援センターは4月から、起業を目指す創業志望者と後継者不在の事業主を引き合わせる「後継者人材バンク事業」を始めた。同県では後継者不在のため黒字でも廃業する中小企業は少なくなく、創業志望者への引き継ぎを図るという。

     この事業は、県内の金融機関や商工会議所などと連携し、創業支援講座の受講者らに候補として登録してもらい、同センターが把握している後継者不在の事業主と引き合わせる。創業志望者にとっては販売先の確保などの起業リスクを軽減でき、後継者不在の事業主にも事業継続のメリットがある。同センターは「登録されているのは創業の意欲がある有望な人材で、後継者に悩んでいる経営者に紹介していきたい」と話している。

    「はままつ企業家カフェ」で相談業務

     事業承継の成否は、地域経済の活力の維持に密接にかかわっている。製造業を中心としたモノづくりの町として成長してきた浜松市では、地元の金融機関や経済団体、行政が支援に一斉に動き出している。

     浜松商工会議所が17年4~6月に実施したアンケートによると、地域の企業経営者で最も多かったのが「65~70歳の層」で、今後の経済活動を考えれば事業承継は差し迫った課題という。浜松商議所が2月に、新規事業や業態転換、市場開拓などをめざす若手後継者向けの事業承継セミナーを開いたところ、定員の50人を上回る参加者が訪れたという。

     浜松市は4月から相談窓口を開設して、支援体制を強化している。浜松商工会議所会館の「はままつ起業家カフェ」で事業承継に関する相談業務を始めた。中小企業診断士が跡継ぎの有無や収益情報といった会社の基本的な状況の把握や事業承継の具体的なステップについて個別に相談を受けている。事業承継をスムーズに進めるには準備期間が必要で、後継者の育成や事業戦略の方向性の策定、資産引き継ぎなどを考えると「5~10年はかかるのが現状」(浜松市産業振興課)という。同市は具体的なニーズに応じて専門家や専門機関への紹介につなげていくという。

     浜松信用金庫(浜松市)も4月から、現在は3人の事業承継とM&Aの担当者を7人に増員した。同信金では取引先の約300社から事業承継に関連する相談を受けており、年間の訪問件数は約700件にもなるという。今後も相談件数は増える見込みで、体制を充実しながら税理士などの専門家との連携も強化していくという。

     神奈川県は3月29日、県内企業の破綻を事前に食い止めるため、経営悪化や事業承継に関する検討会を初めて開催し、大学教授や公認会計士など有識者から意見を聞いた。企業が経営悪化に早期に気付ける仕組みづくりを目指す。県担当者によると「(経営者が)県に相談に来るタイミングが遅く、経営再建の支援が間に合わないことが多い」という。経営悪化の早期発見で経営破綻の防止につなげたい考えだ。

     中小企業では、跡継ぎがいないことから自分の代で会社をたたみ、事業承継をしない経営者も少なくない。事業承継を諦める経営者に、次の経営者や企業を探すような事業承継も想定しているという。検討会は18年度内に3~4回開くという。

    中小企業の経営支援の連携で覚書を締結する高知銀行とビジネスサポートこうちの代表者=高知市で2018年4月11日

    高知銀行と「ビジネスサポートこうち」が連携

     高知銀行と県内の税理士や弁護士でつくる一般社団法人「ビジネスサポートこうち」(高知市)は4月11日、中小企業の経営支援で連携する覚書を締結した。中小企業の経営者らが税制や法律に詳しい専門家に相談しやすい環境づくりを目指す。

     ビジネスサポートこうちは、中小企業の事業再生、承継の支援を目的に今年3月設立された。今後、高知銀がビジネスサポートこうちに顧客を紹介するほか、税理士らによる無料の個別相談会やセミナーを銀行の本支店で開くなどして協力していくという。

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