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 劇場の幕が下りかけた時、主役が久々に登場したようだった。

     森友学園をめぐる検察の捜査が終わった。先月下旬、前理事長の籠池泰典被告は10カ月ぶりに保釈された時、長期間の勾留を「国策だ」と批判した。逮捕前、国有地売買に安倍晋三首相の妻昭恵氏の影響があったと述べた籠池被告。検察が政権に配慮し、口封じのために長期間、身柄を拘束したのではないか。そんな見方をする人もいたが、それは違う。なぜなら長期勾留は珍しくないからだ。

     裁判所は検察の請求を受け、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断した場合、勾留を認める。だが、無罪を主張する人の身柄拘束を長引かせたり、保釈を条件に自白を迫ったりすることは「人質司法」と呼ばれ、冤罪(えんざい)の温床と批判されてきた。近年、保釈が認められるケースが増えているとはいえ、いまだに続くのはなぜか。

         ◇

     6月から「司法取引」が始まった。他人の犯罪を明らかにする見返りに、自分は起訴されなかったり、求刑が軽くなったりする。企業や暴力団の犯罪の全容解明が期待されるが、うその告白で無実の人が処罰される心配は否めない。

     そもそも一連の司法制度改革は強引な取り調べへの反省が原点だったことを忘れてはならない。自白偏重の捜査は冤罪を招きやすい。それに代わる証拠集めの新たな方法として捜査側に与えられたのが司法取引だ。その際、「人質司法」をめぐる議論も、もっと深めるべきではなかったか。

     裁判官や検察官はこの問題をどう考えているのだろう。元裁判官の弁護士、原田国男さんが著書「裁判の非情と人情」に書いている。裁判官時代は保釈に慎重だった。「だが(弁護士になって)被告人との接見を繰り返していると、この不当に長い身柄拘束が本当に許されないものだと実感する。まさに、刑の先取りなのである。この実感は、裁判官はもとより、身柄を扱う検察官にも薄いのではないか?」

     検察は司法取引という武器を手にした。冤罪事件の反省を忘れ、その武器を強引に使って再び冤罪を生めば取り返しがつかない。

     「10人の真犯人を逃しても1人の無辜(むこ)を罰するなかれ」。そんな法の格言がある。その価値観を社会が維持できるかどうか。最後は私たち自身が問われている気がする。(論説委員)

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