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余録

「盗賊のラテン語」と英語で言えば何のことかおわかりか…

 「盗賊のラテン語」と英語で言えば何のことかおわかりか。そう、良からぬ集団の間だけで通用する隠語(いんご)のことである。ラテン語はその昔、学術や法律などの専門家の間で用いられた古代ローマ語である▲ある集団、とりわけ悪事を働く連中の間で隠語が使われるのは、普通の人に分からないようにする用心なのはもちろんだ。だが、それにもまして隠語を用いる集団の「内」の結束を固め、「外」を見下す作用を見逃すわけにはいかない▲では「トクサイ」やら「メーキング」やらという隠語はどんな作用を集団の中に及ぼしたのだろう。とうとう東京地検と警視庁の捜索を受けた神戸製鋼所の品質検査データ改ざん問題である。「内」の病巣に強制捜査のメスが入った▲ちなみにトクサイとは特別採用の略。仕様書の基準を満たさぬ製品を顧客の了解を得て出荷する業界用語だが、それを顧客に無断で行う不正に用いていた神鋼だった。メーキングは検査データの不正書き換えを指す隠語なのだという▲3月に公表された最終報告によると不正は1970年代に始まり、出荷先は国内外の688社にのぼるという。米司法当局が調査を進める中、日本の製造業の土台をなす素材産業で日常化した不正を捜査当局も看過(かんか)できなかったのだ▲素人には分からぬ符(ふ)丁(ちょう)の多い職人の世界だが、盗賊のラテン語に類する隠語がはびこる日本のものづくり産業の変調である。「外」の求める基準に堪(た)えられない「内」の惨状を深刻に恥じてもらわねばならない。

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