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我らが少女A

/304 第8章 25=高村薫 田中和枝・挿画監修

 そして同じ日曜の午後、木更津の君津中央病院では、上田亜沙子と栂野(とがの)雪子もまた一枚の写真を手に、思いがけない記憶のさざ波に襲われている。きっかけは、雪子の孫のためにボンネットを編む亜沙子の、枕元に置かれた裁縫箱に入っていた一枚の古い写真に、雪子の眼(め)が留まったことによる。

 インスタントカメラのチェキで撮られたそれは、印画紙がすでに色が飛んで薄い粉を被(かぶ)ったようになっていて、そこに誕生日ケーキを囲む子どもたちが写っている。真ん中に上田朱美がおり、隣に中学生の真弓がおり、さらには見覚えのある男の子の顔もある。この子、多磨駅にいるあの小野雄太さん? これ、朱美ちゃんのお誕生日の会でしたわね? うちの真弓、中学二年だったかしら。たしか武蔵小金井のポルシェとかいうケーキ屋さんでしたね? そう、思いだしたわ、ものすごく美味(おい)しいケーキだったって真弓が話し…

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