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ぷらすアルファ

「ママがいい」根拠なし 父親の育児は迷惑?

夫婦で子供にご飯を食べさせる家族。父親も手馴れた様子だ=川崎市川崎区で2018年6月2日午後3時51分、田村佳子撮影

ぷらすアルファ(α)

 「言葉の上で男も育児と格好いいことを言っても、子供には迷惑な話だ」--自民党の萩生田(はぎうだ)光一幹事長代行の発言が、議論を呼んでいる。父親の育児は子供にどのような影響があるのか、専門家に話を聞いた。

     ●増える「孤育て」

     川崎市で今月2、3日開かれた、子育て中の母親を応援するイベント「ハッピーママフェスタ」。会場には子供を抱いたりあやしたりする大勢の父親の姿があった。

     9カ月の双子の男児を連れた東京都大田区の男性会社員(35)は、妻(32)が産後の里帰りから自宅に戻って以来、おむつ替え、寝かしつけなど「バリバリ何でもやってきた」。妻が復職してからは、朝は夫婦で保育園に送り、夜はできるだけ早く帰って子供たちを入浴させる。父親が育児に関わるのは「当然のこと。子育ては母親だけがすることではないですよね」。

     パパの方が好き、と子供たちは言うと思う。きゃしゃな体格の妻よりも、自分の方がよく抱っこをするからだ。「ママがいいに決まっている」と言われても「昔みたいに『おれだって仕事しているんだ(から育児はできない)』なんて言えない。妻の方が稼ぐのだから」。そう笑う男性に、息子が抱きついた。

     地域のつながりが薄まり、「孤育(こそだ)て」とも呼ばれるように、孤独な環境で育児をする親の増加が指摘されている。出産後も仕事を続ける女性が増え、仕事と家事・育児の負担も重くなっている。こうしたことが、父親の家庭での役割が重視されるゆえんだ。NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)の安藤哲也代表理事は「今のパパに育児をしないという選択肢はない」と話す。

     ●家庭内の事故減少

     「イクメン」ブームと言われた10年ほど前、藤原武男・東京医科歯科大教授(公衆衛生学)は「イクメンは家庭内の事故を防ぐか」に関心を持ち、データを解析。2001年生まれの子供を対象にした国の「21世紀出生児縦断調査」で、4万人余の子供を分析した結果は「父親の育児は迷惑」とは正反対だった。

     子供が生後6カ月の時に、おむつ替え、寝かしつけなど6項目を父親がしているかについて調べた。よくしている家庭は、少ない家庭に比べ、1歳半までに転落、誤飲、やけどといった事故に遭う割合が9%低かった。特に、父親がよく散歩に連れていくと、24%も少なかった。

     理由については、目が届きやすくなる▽母親の負担が減ることで、母親の保育の質も上がる▽屋外活動で子供の好奇心が満たされ、家庭内で冒険的行動が減る--などが推測される。藤原教授は「子供はきちんと見ていなければいけないというのが大前提で、父親はその担い手になり得る。『ママがいいに決まっている』は根拠がない」と語る。

     石井クンツ昌子・お茶の水女子大教授(家族社会学)や加藤邦子・川口短大教授(発達心理学)の同居する2人親家庭についての研究によると、父親が子供と遊ぶ、入浴の世話をするなどの育児に関わる頻度が高いほど、その子が3歳になった時に自分の意思を集団の中で言葉にしたり、ほかの子供と積極的に関わったりする確率が高かった。石井教授らは「子供の社会性や自発性の発達に、父親の育児への関わりが直接的な影響を与えていた」と結論づけた。

     石井教授による2人親家庭の10代の子供を対象にした別の調査でも、父親との関わりが多い子供の方が社交的な傾向があるとの結果が出ている。子供が触れ合う大人に多様性が出て、発達に良い影響があると考えられる。加藤教授は「母親だけが担う育児は、孤立化や子供の人間関係の乏しさにつながる」として「父親には遊びだけでなく、世話にも積極的に関わってほしい」と育児参加を奨励する。

     ●母親だけで担えず

     子供の心の健全な発達には、信頼する保護者との安定した関係が必要だとされる。児童精神科医の斉藤万比古(かずひこ)・愛育研究所愛育相談所所長は「母親が子供の育ちの絶対的基地であるのは間違いない」という。ただ、赤ちゃんにとっては、世話をしてくれ、温かく見守ってくれる環境全体が「母」のイメージとしてインプットされる。そこには父親や祖父母も含まれ、「父親の育児は迷惑」などということはないと指摘する。「男女の境界というのは曖昧な面があり、母性は女性が、父性は男性が持つものだと二分することはできない。『母』の役割を母親一人だけで担っていることは昔からありえません」

     半面、斉藤所長は「今回の議論に当事者の子供は関与していないことを忘れないで」と指摘し、大人がそれぞれの価値観や生き方を正当化しようとする前に、子供との関わり方を冷静に見直すことも求めている。

     「父親ならではの育児」はほとんどないとFJの安藤さんは考える。「パパの仕事は、子供の育つ環境をより良く、安全安心にすること。そして一緒に育児を担う姿勢を見せること。それがうれしいとママたちは言う」と話す。萩生田氏の発言は、3歳までは母親が育児を担うべきだという「3歳児神話」が透けて見えるとも分析する。「昭和の時代の考え方。平成も終わろうとしているのだから、父親の意識と行動が日本の子育てを変えるというくらいに考え方をアップデートしてほしい」【田村佳子】

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