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社説

6・12会談へ 日本外交の試練 ポスト米朝への構想力を

 来週に迫った初の米朝首脳会談を控え、安倍晋三首相がトランプ米大統領とワシントンで会談した。

     北朝鮮が非核化に向けて具体的な行動を取るまでは制裁を解除しない方針を確認した。

     さらに、トランプ氏は安倍首相の求めに応じ米朝会談で日本人拉致問題を提起すると確約したという。

     安倍首相は終了後の記者会見で「日米は完全に一致している」と強調した。

     共通の目標を日米がすり合わせ、米朝会談に臨む原則的な立場を確認したことは適切だろう。

     しかし、米朝会談の結果がすり合わせ通りになるとは限らない。

    「成功」優先の米大統領

     米朝会談に向けた交渉でトランプ氏の姿勢は一貫していなかった。

     会談を即断で受諾したと思えば、中止を表明し、「プロセスの始まり」という位置付けで再設定した。

     日米が共に強調してきた「最大限の圧力」という表現を突然封印し、北朝鮮への融和姿勢に転じた。

     11月に米議会の中間選挙を控え、内容のいかんに関わらず、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と握手するだけで「会談は成功した」とアピールしても不思議ではない。

     むしろ、日本の期待に沿わない可能性は十分にある。日本外交が試練を迎えるのはまさにそのときだ。

     北朝鮮は「段階的で同時並行的な措置」を譲らず、非核化の検証作業が後回しになるなら、目の前の核兵器の脅威は消えない。

     ミサイル開発の全廃を目標にしながら米国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄を優先させれば、日本を標的とする数百基の短・中距離弾道ミサイルは残される。

     トランプ氏がいかに拉致問題を理解し北朝鮮に提起しても、日朝間でなければ解決できない。

     しかし、たとえ日本にとって十分な内容でなくても、米朝会談は朝鮮半島を含む東アジア情勢に劇的な変化をもたらす転換点となるだろう。

     新たな状況に合わせた戦略的な外交をどう打ち出せるか。日本外交の構想力が試される場面である。

     朝鮮半島の分断は、第二次世界大戦後、ソ連と米国が分割統治し、同じ民族でありながら北朝鮮と韓国に引き裂かれたのがきっかけだ。

     その源流は日本が1910年に半島の全域を統治していた韓国を併合し、植民地政策を行ったことに行き着く。日本は朝鮮半島問題に歴史的な責任を負っている。

     50年に北朝鮮が韓国を奇襲して始まった朝鮮戦争では米国を中心とする国連軍が韓国を支援し、中国が北朝鮮に兵力を投入した。これに日本も巻き込まれ、戦後政治を規定する契機となった。米国による占領終了とともに日米安全保障条約が結ばれ「55年体制」が定着していった。

     トランプ氏は朝鮮戦争の終結を宣言する合意文書に調印する可能性についても言及している。そうなれば平和協定に進展し、将来の南北統一の構想も現実的になってこよう。

    平和創造へ関与強めよ

     日本は日朝国交正常化を含め、東アジアの平和構築のプロセスに関与していく必要がある。

     南北間の対立はあっても、植民地支配の歴史的経緯から対日感情は共通している。将来統一された場合、反日感情が残る国が誕生することは日本の国益に合致しない。

     日本は支援や協力を柱とする平和構築の長期的な計画を策定すべきだ。それに基づいて実績を積み重ね、信頼を根付かせることができれば良好な関係を育むことになる。

     例えば核の査察や搬出、解体など長期にわたる非核化プロセスへの支援だ。国際原子力機関(IAEA)への資金拠出などで貢献できる。

     米国との関係だけでなく中国、韓国、ロシアにもウイングを広げ連携も強化すべきだ。外相がシャトル外交を展開し平和構築に向け6カ国協議再開を提唱してもいい。

     安倍首相は記者会見で「拉致問題は私と金委員長で解決しなければならないと決意している」と語った。

     さらに2002年の日朝平壌宣言に基づき「我が国も不幸な過去を清算し、国交を正常化し、経済協力を行う用意がある」とも表明した。

     弾道ミサイル発射を繰り返し、日本を挑発し続けた北朝鮮への経済協力には国民の反発もあるだろう。

     しかし、局面の転換に順応し「米朝後」をにらんだ戦略を示してこそ、日本が将来にわたり東アジアで重要な地位を占めることができる。

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