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我らが少女A

/305 第8章 26=高村薫 田中和枝・挿画監修

 同じ日曜の夜、真弓はベッドに入ってからも、写真のデータを移したスマホを手に知らぬ間に夜更かしをする。日付順に並んだ数百枚もの写真は、強いてタイトルをつけるとしたら、《一人の高校生の眼(め)に映った二○○五年武蔵野》といったところだろうか。学校周辺から吉祥寺まで、退屈と好奇心と嫌悪と愛着をないまぜにして日々移動してゆく浅井忍の眼の記憶そのものだが、当時は知り合いですらなかった他人の記憶からこうして眼を離せない理由を、真弓はよく自覚している。というのも、忍がカメラ付きケータイを手に徘徊(はいかい)していた二○○五年当時、自分を含めた栂野の家族にとって、忍はどこまでも闖入(ちんにゅう)者であり、覗(のぞ)き見をする者であった一方、その眼は自分たち家族の現実を映してみせる残酷な鏡でもあったからだ。

 スカートを短くして髪を肩に垂らし、薄く口紅を引いてロンロンやロフトやゲーセンに立つ女子高生の姿は、…

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