メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

Topics

奈良時代の借用書「月借銭解」 上司が強引に貸し付け? 「利息目当てか」大阪歴博館長が新説

 奈良時代の写経生が借金をしたのは、上司からの勧誘を断りきれなかったから--。大阪歴史博物館の栄原永遠男(さかえはらとわお)館長(日本古代史)が奈良・正倉院に伝わる借金の証書「月借銭解(げっしゃくせんげ)」を分析し、そんな説を提示した。

     3月末に刊行された「正倉院紀要第40号」で発表した。「月借銭解」は東大寺の造営と運営に当たった役所「造東大寺司」の中で写経事業を担当した部署「奉写一切経所」の借金記録で、宝亀3(772)~同6(775)年の約100通が残る。借金は事務長的な役職「案主(あんず)」だった「上馬養(かみのうまかい)」という人物を中心に運営され、月単位の利息を決め写経生らに金を貸し付けていたとみられる。

        ■  ■

     これまでも研究されてきたが、今回栄原さんは記録の事務処理の流れを考察した。裏面が米の支給台帳として再利用されていることや、多くの文書の裏面の端に割り印のように「養」の字が半分だけ残っていることなどに注目。文書は提出されると貼り合わせて巻物にされるが、借金が返済され事務処理が終わるとはがされて抜き取られしばらく保管された後、裏がまだ使える他の文書と共に再利用された可能性が高いとした。

     さらに、現存しない月借銭解がどれくらいあったかも検討した。ある時点での借入者リストなど別の文書と照らし合わせ、月借銭解の残存率はおよそ2割と推測。宝亀3~5年の写経生名簿のうち月借銭解に登場する人物の率も2割ほどのため、現存しない分を含めるとほぼすべての写経生が借金をしていたと考えられると結論づけた。

        ■  ■

     借金の理由としてはこれまで生活の困窮などが考えられていたが、栄原さんは「全員が食べていけないほど困窮していたとは考えにくい。自らの意思というより、借りさせられていたと考える方が自然」と話す。

     栄原さんは上司である「上馬養」の個性にも注目する。「この時代のさまざまな文書に名前が登場し、顔が広く有能な役人だったと考えられる。月借銭解には漆職人や瓦職人など写経生ではない人物の名も登場しており、馬養が人脈を生かして周辺にも勧誘の対象を広げていたのでは」と話す。その背景として「この頃の奉写一切経所は閉鎖される直前で、政府から十分なお金が回ってきていたか疑問。借金の利息を運転資金に充てようとしていたのではないか」と考える。

     一方で「馬養は長年案主の座におり、嫌われ者だったとも考えにくい。多少強引なやり方も彼の人柄のなせる業だったのかもしれない」と想像を膨らませる。【花澤茂人】

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 質問なるほドリ 闇ウェブって何なの? 通信内容を暗号化 発信者の特定困難=回答・岡礼子
    2. 殺人 「闇ウェブ」専門家刺され死亡 福岡繁華街、男出頭
    3. サッカー日本代表 セネガルと引き分け 勝ち点4に
    4. トランプ氏 「日本で私は英雄」米テレビで主張
    5. サッカー日本代表 「西野監督ごめんなさい」ネットに続々

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]