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炎のなかへ

/176 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

その夜(11)

 工場街の路地を抜け、大横川沿いの道に出るまでに何分かかっただろうか。このあたりは倉庫や問屋が多い街並みだが、どの木造家屋にも火が移っていた。タケシは自分の想像力のなさを痛感していた。今まで空襲をただの火事だと考えていたのだ。燃える家が一軒、あるいはせいぜい数軒なら街の一部が燃えるだけだった。火を消すか、火のないところに移動すれば、それでいい。安全な場所からのんびりと見物を決めこむこともできるだろう。

 けれど燃えているのが、周囲をとり巻く数百軒数千軒ならどうだろう。それでは火のないところに逃げること…

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