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雨のち晴れ

社名変更、業績低迷の遠因 アートコーポレーション社長・寺田千代乃さん

顧客重視徹底し回復

 1990年代前半は、創業以来順調に伸びていた売上高が一時的に落ち込んだ、つらい時期でした。バブル経済の崩壊が一因ですが、根本的な原因が何かあるのでは。そう思って営業現場を訪問。お客様の生の声を聞くように心掛けたことで道が開けました。

     76年に夫婦で「アート引越センター」を創業。当時、連絡先を調べるなら電話帳という時代。「ア」で始まれば最初のページに掲載されて目に留まりますし、引っ越し業者だとアピールできるとも考え抜いた社名です。90年6月に自動車販売など事業の多角化を進めたため「アートコーポレーション」に変更しました。「引っ越しだけの会社ではない」との思いからです。テレビCMなどでも旧社名を使うのをやめました。

     でも、その後の90、91年度は営業が低迷し、売上高は2年連続で減少しました。創業以来初めてのことです。折しもバブル経済が崩壊。法人顧客が転勤を抑制、引っ越し需要が大幅に減ったのが響いたわけです。「できることは何でもやろう」と決め、営業担当にハッパをかけ、それまで以上に社員と現場を見て歩くことにしました。

     「アートコーポレーションはアート引越センターのことなんですか」。92年のある週末、東京都内のお客様に名刺を差し出すと驚いた様子で問われました。テレビ出演などで私が引っ越し会社の社長だと理解されていたようですが、名刺のアートコーポレーションという社名がぴんとこなかったのでしょう。でも、その問いかけで私はようやく気付きました。長年親しまれてきた社名を変えたことが顧客離れを招き、業績低迷の遠因になっていたのだと。

     「お客様のことをないがしろにしていた」。そう反省し、社名としてアートコーポレーションを使い続ける一方、お客様の目に触れるCMなどではアート引越センターをブランド名として復活させることに。アンケートでお客様の意見を聞く部署も新設。皆さんの声をこれまで以上に取り入れるよう徹底もしました。こうした取り組みが次第に実を結び、94年度に5年ぶりに過去最高の売上高を記録しました。社員共々、お客様を大事にするという意識で仕事に臨んだ結果だと思います。

     会社は今も順調に成長しています。常にお客様から心が離れていないか、気を配りながらの経営です。92年のあの日、それを気付かせてくれたお客様には感謝しています。

     今、引っ越し業界は人手不足に伴うドライバー不足が深刻化しており、昨夏には引っ越し大手として初めて定休日を設けました。安定して人材を確保するため、社員が働きやすい環境を整えていきたいと考えています。<聞き手・宇都宮裕一>


     ■人物略歴

    てらだ・ちよの

     1947年生まれ。大阪市立今宮中卒。76年にアート引越センター(現アートコーポレーション)を創業、翌年社長に就任。引っ越しを一大産業に育て上げた半生はテレビドラマ化。2005年から関西経済連合会副会長も務める。71歳。兵庫県出身。

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