メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

詩歌の森へ

『塚本邦雄の宇宙』=酒井佐忠

 戦後短歌最大の巨匠、塚本邦雄の作品を評論家として支えた菱川善夫。従来の短歌のシーンを変えた塚本の仕事は、盟友の菱川の理論とともにあった。菱川が亡くなる2週間前まで続けた代表歌500首についての講義が、菱川の地元・札幌のカルチャーセンターで行われた。その内容が『塚本邦雄の宇宙』(1・2)の2巻にまとまり短歌研究社から刊行された。短歌に全てを賭けた巨匠と評論家の熱い息吹が伝わる。

     <カフカ忌の無人郵便局灼けて頼信紙のうすみどりの格子>。歌集『緑色研究』。ユダヤ人を両親とするカフカは「不条理」を追求した。『変身』は朝目ざめると「虫」になる話。その「不条理」と空白の字のない電報用紙。塚本は「言葉そのものの不条理」を考えたと菱川はいう(第1巻)。<みちのくに霰(あられ)ふれるかわが身よりゆゆしき歌ごころ湧きいでつ>。歌集『詩歌変』。「ゆゆしき歌ごころ」は国体批判につながる心とみる(第2巻)。

     講義は2006年4月から07年11月まで続けられたが予定終了の前に菱川は12月に逝去した。まさに生を賭けた塚本研究の遺産だ。第2巻の解説で永田和宏はとくに後期作品鑑賞が貴重と指摘する。夫人の菱川和子さんは後記で、若き日の菱川に塚本が、「北の涯(はて)の輝かしい詩魂のために」という賛辞をくれた日をかみしめている(短歌作品、歌集名は正字体)。(文芸ジャーナリスト)

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 大阪震度6弱 最先端の電子顕微鏡が損傷 大阪大
    2. 堺・男性殺害 逮捕の姉、事件前に「練炭自殺」検索
    3. 自民総裁選 「ポスト安倍」、会期延長で身動き取れず
    4. 大阪震度6弱 市長、ツイッターで「全校休校」 現場混乱
    5. 受動喫煙対策 それでも先生か がん患者に「いいかげんにしろ」 自民議員、規制巡り 衆院厚労委、参考人陳述

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]